「働かずに年収1000万…」マルチ商法の会員になっちゃった20代男子、勧誘の一部始終
組織のタワマンパーティーに参加
仲の良い先輩を疑うのも悪いと思った渡辺さんは、A先輩の仲間が主宰するシャンパンパーティなるイベントに参加することになります。
「どうやらタワマンの一室を組織の集会所兼パーティルームとして借りているようでした。優に100平米は超え、高そうな家具が並ぶ室内には平日にもかかわらず、多くの若者が集まっていました。
話をしてみると、出身が地方だったり、『休みが平日なので既存の友人と会う機会が限られるけど、ここに来れば誰かしら顔なじみがいるので、安心できる』と言っている人もいて、友だちを作るコミュニティとしても機能してるんだなと思いました」
周りを観察していると、いかにも幹部っぽい人の姿が。
「外見はロン毛でシルバーアクセを全身に身につけたサーファー風。ひと際豪華なソファに腰かけ、取り巻きらしき4、5人の女性と談笑する姿には風格がありました」
東京タワーをバッグに「この光景、夢じゃなくなるよ」
この彼こそがA先輩が心酔する人物だったのです。
「聞けば権利収入で、不労所得が年1000万円を超えていて、日々気ままに暮らしているとのこと。気になったのが、やたらと僕に今の仕事に不満はないかと聞いてくるんです。
僕は『特にない』と言いましたが、グチを吐いていたら、恐らく普通に働くことがいかにバカバカしいかという方面にもっていかれていたんじゃないかと思います」
それでも百戦錬磨の幹部は表情ひとつ変えません。シャンパングラスを片手に、渡辺さんをバルコニーに連れ出します。
「ライトアップされた東京タワーをバックに『この光景、夢じゃなくなるよ』って真顔で言われました。その場の雰囲気に押されて、慣れないシャンパンをハイペースで飲んだ僕は、段々と感覚が麻痺していたのかもしれません。
この人たちは本当に良い人で、たまたま会っただけの僕になんでこんなにオイシイ話を持ち掛けてくれるんだろうって気がしてきたんです……」