今あえて「ヤクザ社会」に飛び込んだ若者、それぞれの理由
一般人にバカにされても…気の毒な内情
とりわけ彼らの現実を見ていて、気の毒だと思ったことがあるという。
「組がケツ持ちをしているというクラブで、暴れた堅気(一般人)の客を店からつまみ出そうとしたら、思いっきり腹を殴られたそうです……。
このご時世ですから、ヤクザが一般の人間に暴力を振るってしまうと、どんな理由があっても逮捕されるのはヤクザです。彼もそれはわかってますから、とにかく辛抱したらしいですが、ストレスは相当溜まっているようでした」(B氏)
昭和の時代は、いじめられっ子がいじめっ子を見返したくて、ヤクザになるケースもあったというが、今のヤクザにそれは通用しない。繁華街でニラみを利かせなければいけない若手組員にとっては、手足を縛られているのも同然だ。
鞄に入れておいた財布からカネを抜かれても…
また、30代で組幹部に出世したやり手のヤクザは、とある酒宴の席でこんなことを語った。
「ヤクザの組事務所は24時間体制になっていて、深夜から早朝の時間帯は当番の組員が事務所に詰める。その当番の時に限って、自分の鞄に入れておいた財布からカネを抜かれることがたびたびあったんだ。
部外者がヤクザの事務所に忍び込んで泥棒するのは考えにくい。つまり犯人は身内しかいない。ただ、カネを抜いたヤツの目星はついてるけど、とがめることはない」
その場にいた中堅記者が「どうしてですか?」と聞くと、「抜かれても数千円とか1万円ぐらい。怒ってもしょうがないよ」と、ハイボールが注がれたグラスを片手に、笑いながら言っていたそうだ。
昔なら“半殺し”に遭ったような狼藉も、世間や法律の眼が厳しい今は笑って済ませるしかないようだ。
<取材・文/永田明輝>
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