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落ち込んだときに、わずか1分間でモチベーションを上げる手法

学び

人生でもっとも感動的だった出来事は?

 その方法は、自分の気持ちの高まり度合を1~10の数字で見極めることから始める。「10」はモチベーションが高く「1」は低い。

 このように案内していくと、5の定義は何か、8の定義は何か、2の定義は何かという質問を受けることがよくある。定義はない。ほかの人との相対評価をしたり比較したりしないからだ。自分が10だと思ったら10、5だと思ったら5だと、見極めればよい。

 また、よくある質問が何に対する気持ちの高まり度合かという質問だ。心のうちが「仕事のことで一杯であれば仕事のこと」「家族のことで一杯であれば家族のこと」というように自身の気持ちを見極めた通りで大丈夫です。

 良し悪しではないが、定義やフレームワークを与えられないと考えられない人はモチベーションが上がりにくいという傾向があることがわかっている。

 1~10の数字で自分の気持ちの高まり度合を記したら、2人1組になって「これまでの人生でもっとも素晴らしく感動的だった出来事」を1分間ずつ話す。実施することはこれだけだ。1分ずつ交代して話したら、再び気持ちの高まり度合を1~10の数字で記す。

 事前が5で、事後が6だったら、モチベーションが1レベル上がったということだ。事前が8で事後が8だったら、モチベーションレベルに変化はなかったということになる。

 私の演習参加者の平均は75%が1レベル以上アップし、40%が2レベル以上アップしている。そして、なぜこの演習がモチベーションレベルを上げることができるのかということを参加者の人々に考えてもらう

共感し合うことでモチベーションは上がる

問題解決

「これまでの人生でもっともすばらしく感動的だった出来事」を1分ずつ話すことによってモチベーションレベルが上がる理由として、まず挙がるのは「もっともポジティブなことを思い出したから、その気持ちが蘇ってきた」という回答だ。

 その通りで「これまでの人生でもっとも悲惨だった出来事」を話して演習したこともあるが、モチベーションレベルは上がらない。

 モチベーションレベルが上がる理由として「相手に聞いてもらったり、相手の話を聞いたりして、共感し合えたから」という答えも挙がる。

 確かに「これまでの人生でもっともすばらしく感動的だった出来事」を思い出して、演習シートに記入しましょうという個人演習をしても、これほどモチベーションレベルは上がらない。相手と共感し合って、モチベーションが高まる部分がある。

 私の演習は、何を話すか準備をしたり、下書きしたりすることなく、いきなり始まる。話しながら考える演習だ。なぜならば、実践の場では、例えばお客さまなど相手を待たせて「ちょっと準備させてください」などと言える場面はほとんどないからだ。

 そこで、いきなり話すことになって、集中力が高まって、モチベーションレベルが上がったという回答をする人もいる。

 相手を見つけて、語り合うことに抵抗があるようだったら、一人で思い出して語ってみることでもよい。1人で語ることにも抵抗があるようだったら、モチベーションレベルの上昇度合は下がるが、思い起こすだけでもよい。わずか1分で、時間もコストもかからずに、モチベーションレベルを上げることができのだ。

<TEXT/山口博>

モチベーションファクター株式会社代表取締役。慶應義塾大学法学部卒業、サンパウロ大学法学部留学。国内外金融・IT・製造企業で人材開発部長、人事部長を経て、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを歴任後、現職。横浜国立大学大学院非常勤講師。日本ナレッジマネジメント学会会員。著書に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社刊)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい刊)

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