オフィスの「フリーアドレス化」が中途半端な結末で終わる要因
名札の作成で積極度合を高める
座席を決めないのは、社員一人ひとりに自由裁量の余地を与えているのだ。このように申し上げると「それでは、同じ所属の人や仲の良い人同士で固まってしまう」「主催部門が座席指定して、所属や関係性などを考慮し、離して座らせるべきだ」という意見が必ず出る。
私の考えは、同じ所属同士や仲良し同士で座りたければ、そのように座ればよい。参加者相互の演習を組み込んだプログラムを実施していると、事実、何回か参加していくうちに、別の所属の人や知らない人の側に座りたいという気持ちが自然と湧き上がってくるものだ。そのような自発的な行動が大事で、無理に別の所属の人とも座らせても意味はない。
名札を参加者自身に記入してもらうのは、その会議や説明会の最初に、名前を書くという行動をすることで、会議参加の積極度合を高める効果を期待している。
「話したくなったら話す」は社員尊重のメッセージ
そして、「話したくなった人から話す」というルールは、順番を決めたり指名されたりすることに比べて、格段に参加者の一人ひとりの能動性を促すことができる。指名されて行うのに比べて、能動的に自発的に行われる自己紹介は、場をはるかに活気づける。
これらの効果もさることながら「話したくなった人から話す」方式で、私がもっとも期待する効果は、主催者が参加者に対して「早めに発言しても、後で発言しても良いのですよ」「一人ひとりの状況を尊重します」というメッセージを送れることだ。
このようなメッセージを送っている会社なのか、「一人ひとりの自由裁量は許さないので、言われた順に発言せよ」というメッセージを送っている会社なのかを見極めることができる。
「社員を大事にします」「社員第一主義」などというスローガンを何回唱えることよりも、「話したくなった人から話す」という簡単なことを実施することのほうが、社員を大事にすることの実現度がはるかに高いのだ。
<TEXT/山口博>