漫画家・吉田戦車が振り返る。不条理マンガが通用しなくなった理由
インターネットの普及が現実に与えた変化とは?
また、そのような余裕がなくなっていった背景にはインターネットの普及があるとも指摘。
「PTAに叱られるようなエッチなマンガも少年マンガ雑誌には存在したわけで、そういうちょっと悪の部分、悪ふざけの部分が常になければツマラナイだろうなというのが、雑誌に携わる人間たちの性格の中にはあったんですけど、それがやっぱり薄れていった」
そして、吉田さん自身も「かつてに比べて、自粛するネタが増えていった」と続けます。閉塞感を覚える社会の中において、マンガの役割は「世の中のツラいことを一瞬でも忘れてもらうことなのかな」「戦争も殺人も犯罪もないという世界を、常に作りたい、描きたい」と。
マンガ家として吉田さんが今の時代に何ができるか。模索は続きます。
各世代に聞く「次に解決すべき社会問題」
読売中高生新聞が行った「平成時代アンケート」によると、現役の中高生が考える、平成の次の時代に注目すべき社会的課題の1位は少子高齢化への対応(8725票)でした。続く2位は環境問題への対応(4303票)、3位は国際テロ対策(2993票)となっています。
また、大和ネクスト銀行が、全国の20~69歳の男女を対象におこなった「ポスト平成(平成の次の時代)に関する調査」でも、ポスト平成に残したくないと思う社会問題は「少子高齢化」(47.5%)が最も多く、次いで「地球温暖化」(46.5%)と回答しています。
この結果を見ると、若者世代と現役世代はともに少子高齢化と環境問題が喫緊の課題であるという認識を共有しているようです。若者世代と現役世代が課題解決に向けて共に手を取り合い、知恵を出し合うことができれば、ポスト平成をより良い時代にしていけるのではないでしょうか。
新しい時代の幕開けはすぐそこに
「中園さんの描く登場人物に勇気づけられてきました」
「確かにオウム事件以降、いたずらっぽいことを面白がることが規制されていったかも」
ネットではドラマやマンガなどのフィクションでともに並走してくれた中園さんや吉田さんに共感するコメントが多く寄せられました。
それぞれの時代に対する切り取り方の違いはあれど、受け取り手を元気づけるような作品を描こうと、2人が模索している姿が印象的でした。
新しい時代の幕開けはもうすぐそこに来ています。いったい、どのような未来が待ち受けているのでしょうか。
<TEXT/湯浅肇>