bizSPA!

5年連続で売上1位!市場でトップを牽引する花王・ビオレの独自のマーケティング戦略とは

ニュース, 暮らし

観測史上最高の暑さを記録した2025年の夏、職場における熱中症対策の強化が義務化されるなど、あらゆるシーンで暑さ対策の意識が急速に高まっている。そんな中、花王株式会社(以下、花王)は、年々深刻化する紫外線や暑熱ストレスから肌を守るため、社会課題の解決を軸にした多様な取り組みを推進し、着実に業績を伸ばしている。その背景には、生活者の変化を的確にとらえ、価値へと転換する花王ならではの独自のマーケティング戦略があった。

「小失敗を恐れない」独自のマーケティング革新

説明会で紹介されたビオレ新製品 左から「ビオレZero ミスト」、「ビオレ呼吸感ベールUV」、「ビオレZero シート」

登壇したスキンケア事業部 ブランドマネージャー 小林達郎氏によると、Biore(ビオレ)の日焼け止め・UVカットシリーズ「ビオレUV」は、日焼け止め市場で5年連続売上トップを記録し、金額シェアを着実に伸ばしているという。その強さを支える要因のひとつが、2021年にスキームされた “小失敗を恐れない”先行販売を活用した独自のマーケティング手法だ。

日焼け止め市場は、気候などの外的要因や季節変動の影響を強く受けることから、新商品の展開には大きなリスクが伴いやすい。そこで花王は、新商品をいきなり全国に流通させるのではなく、契約企業など限られた市場での先行販売を行い、リスクを最小限に抑えたなかで売れ行きデータなどを取得。それにより、生産量の精度を高められるだけでなく、消費者のリアルな声を拾い上げ、商品改良に反映するといった独自のマーケティングサイクルを確立しているという。

さらに、「使用場面(Scene)/店頭(Store)/口コミ(SNS/Social)」の頭文字を取った、3つのS に基づく「Three “S”サイクルモデル」を見据えることで、社会的潮流と生活者の強い欲求を的確に捉え、購買へと自然に導く戦略を取っているとも説明した。

アクアリッチUV
ビオレ呼吸感ベールUV:花王独自のウォーターベース処方に高抱水性ポリマーを配合。湿度に応じて塗膜が変化し、環境が変化しても快適さを維持する

先述した「ビオレ呼吸感ベールUV」はこれらに則り、2025年に先行発売されている。試行錯誤を重ねて生まれた“スフレのような独特のテクスチャー”がすでにSNSを中心に話題となっており、マーケティング戦略が見事にハマっているといえる。本製品は全国販売だけでなく、台湾や香港などの海外展開も予定している。

「B to C」と「B to B」、異なる市場を超えて価値を創出

2025年6月1日以降、厚生労働省は職場における熱中症対策の強化を義務化し、事業者には従業員の安全確保に向けた具体的な対策が求められるようになった。こうした状況を受け、花王(ビオレ)は暑熱リスクのある法人向けに、冷却シート『ビオレ 冷タオル』の積極的な活用を促す取り組み「ビオレの冷サポート」を開始した。

先行導入した清水建設株式会社では、「つけた瞬間にひんやりして作業がしやすかった」といった声が寄せられ、利用者の約90%が「使用してよかった」と回答。また、空調服と併用することで、より高い冷却効果が得られることも確認されている。

冷タオル 作業服

一見するとBtoB領域に向けた取り組みだが、花王の狙いはそれだけではない。「冷サポート」を通じて使用者に確かな効果を体感してもらうことで、個人利用につながる可能性が生まれ、BtoC領域での売上増や評判向上にも寄与する。それが結果的に企業導入の判断材料としても好影響を与える、という“売上→評判→導入”の循環を見込んでいる。

同社はこれまでBtoB領域に向けた本格的なセールスを行ってこなかったという。未開拓の分野に踏み込んだ今回の取り組みによって、どのような影響があるのか注目していきたい。

説明会の様子

「肌は、ヒューマン・インターフェイス」をブランドパーパスとして掲げるビオレ。その意味するところは、肌は多くのことを感じ取り、人と社会をつなぐ大切なコミュニケーションツールであり、毎日の暮らしを支える“接点”そのものだという考えだ。

振り返れば、担当者から今回説明していたマーケティング戦略や各種取り組みは、共通して“商品と生活者が絶妙な相互関係をつくり、つながっていく構造”があるように思える。それは1980年の誕生以来、40年以上に渡って消費者の肌とのつながりを第一に考えてきた、ビオレならではの視点があるのかもしれない。

写真:土田洋祐&PIXTA

おすすめ記事