ガソリン暫定税率廃止【やさしいニュースワード解説】

在京の大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが時事ニュースをやさしく解説。今回は、「ガソリン暫定税率廃止」です。
1974年に導入された「ガソリン暫定税率」が廃止へ
ガソリン暫定税率が12月31日に廃止される見通しになりました。ガソリン暫定税率とは1974年に道路整備に活用する目的で導入されたガソリンに関する税への上乗せ措置です。最初は2年間の臨時措置として導入されましたが、2年を経過した後もこれまで長く続いてきました。
ガソリンは実は税金のかたまりです。1リットルあたり、国の一般財源にあてられる揮発油税が24.3円、 地方公共団体に譲与される地方揮発油税が4.4円、 そして暫定税率が25.1円と合計53.8円もかかっています。トラックの燃料などに使う軽油については、軽油取引税の中に1リットルあたり17.1円の暫定税率が含まれています。
ガソリン暫定税率をめぐっては、2025年6月に当時の野党から廃止法案が国会に提出されましたが、廃案になりました。 その後、7月の参議院選挙で、与党の議席が過半数割れとなった結果を受けて、 ガソリン暫定税率の廃止が与野党で合意されました。その後、与野党による法案が国会に提出され、 11月25日に衆議院で可決されたことで法案が成立する見通しとなりました。
1世帯あたり平均で年間約1万2,000円の負担軽減
ガソリン暫定税率が廃止されると家計や事業者への影響は大きくなります。 まず、家計はガソリン価格が安くなるために自動車を保有している世帯にメリットがあり、1世帯あたり平均で年間約1万2,000円程度の負担軽減になると政府は見ています。
仕事でガソリンを大量に使う企業や公共交通機関にとってもプラスの影響があります。 高市政権は軽油にかかる暫定税率についても廃止する予定にしており、 軽油を多く消費するトラック業界などにとっては燃料費負担が減ることによるメリットは大きいといえます。
政府は市場での混乱を避けるために、ガソリン価格への補助金を段階的に増やしており、11月13日からはそれまでの1リットル当たり10円の補助を15円に引き上げ、27日からは20円に引き上げることにしています。
さらに12月11日からは補助額が暫定税率による上乗せ分と同じ水準の25.1円になります。補助金の額がそのまま店頭価格に反映されるわけではありませんが、小売価格は順次、値下がりしていくとみられています。
ただ12月31日に暫定税率が廃止されるタイミングで給油する人も増えることが予想され、 ガソリンスタンドに給油待ちの列ができたり、在庫が払底して一時的に品切れ状態になったりする懸念もあります。混乱を避けるため、資源エネルギー庁は、 普段通りのペースで給油をするように呼びかけています。