FRBの利下げとトランプ大統領【やさしいニュースワード解説】

在京の大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが時事ニュースをやさしく解説。今回は、「FRBの利下げとトランプ大統領」です。
政策金利を0.25%引き下げ
アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は 9月17日まで開いた金融政策を決める会合で政策金利0.25%引き下げて、年4%~4.25%にすることを決めました。
FRBの利下げは 2024年12月以来6会合ぶりで、第二次トランプ政権の下では初めてとなります。利下げの理由についてFRBのジェローム・パウエル議長は会合後の記者会見で「失業率は低い水準を維持しているが、わずかに上昇している。雇用の増加ペースは緩やかになっており、雇用の下振れリスクは高まっている」と述べ、雇用情勢を重視して経済を下支えする決定を今回行ったことを説明しました。
トランプ大統領の圧力とは無関係!?
FRBの金融政策をめぐっては、トランプ大統領が、これまでのところ好調だったアメリカ経済に与える影響を意識して、パウエル議長に繰り返し利下げを求めて、直接・間接にさまざまな形で圧力をかけてきました。しかし、FRBは政治からはあくまで独立した存在であり、今回の利下げは、経済の実態に即した判断だったとしています。パウエル議長も記者会見で「ある意味でリスクマネジメント(管理)の利下げ」と述べています。
アメリカの金融政策の行方は、世界中の市場関係者が固唾をのんで注目しています。今回、大方の予想どおりFRBが利下げに踏み切ったことで、直後の日米の株式市場では株価がそろって上昇し、9月18日の東京株式市場では日経平均株価が終値で初の4万5,000円台に乗せました。
トランプ大統領とFRBとの関係
FRBが今後、年内に何回追加利下げを実施するかが次の焦点となりますが、現時点では0.25%ずつ2回、計0.5%の利下げに踏み切るのはないかという見方が出ています。今後のアメリカの雇用情勢の行方に加え、トランプ大統領が実施している貿易相手国への関税政策がアメリカ経済にどのような影響をもたらすかが利下げのペースを決めるカギを握っているといえます。
今後、トランプ大統領がFRBにさらなる利下げを執拗に求める可能性もありますが、パウエル議長は記者会見で「FRBはデータに基づいて仕事をしており、それ以外のことは決して考慮しないという文化が深く根付いている」と述べ、FRBの独立性は維持されるべきであることを強調しています。
トランプ大統領とFRBとの関係は、金融政策のあり方のほか、理事の人事をめぐる動きなどでも緊張関係をはらんでいます。FRBが今後トランプ大統領の政治的な圧力をはねのけて独立性を保ち、適切な金融政策を行っていけるかが今後注目されます。