物価上昇は止まらない…それでも「政府が増税を進める理由」を京大教授に聞く
ロシアのウクライナ侵攻や円安などの影響により、2022年は深刻な物価上昇に悩まされる1年だった。しかし、物価上昇は収まる気配がなく、ますます困窮状態に陥る人は増加するかもしれない。
誰もが大胆な減税策を望んでいるにもかかわらず、政府は防衛費増額のための増税を検討している。国民の生活を豊かにすることが政府の仕事であり、どうして追い打ちをかけようとしているのか。『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(ポプラ新書)の著者で、京都大学大学院工学研究科教授の藤井聡氏(@SF_SatoshiFujii)に話を聞いた。
2023年も物価上昇は継続か…
まず、円安が収まらない理由を解説してもらおう。閉塞感が漂う現在の状態は一体いつまで続くのか。「ウクライナ戦争はしばらく続くため、世界的な資源・食料不足が継続するでしょう」と藤井氏は語る。
「また、物価上昇の主要因である円安も終わりそうもないです。岸田内閣は、増税や財政支出を抑える“緊縮路線”を推進しており、日本のデフレ脱却は不可能です。経済が上向かない限り、日銀は低金利政策を継続せざるを得なく、金利を抜本的に上げることができません。
その結果、金利の低い円は売られ、一方で金利の高い米ドルを買われるため、ますます金利格差は拡大。円高に転じることは難しくなります。こうした状況を鑑みると、1年前よりも状況は悪化しています。2023年は2022年以上の物価上昇を経験するかもしれません」
焼け石に水な政策ばかり?
続いて政府が2022年に実施した物価上昇対策、生活支援策など振り返っていきたい。これらの施策は悩める市民にとってのカンフル剤になりえたのか。
「ガソリン事業者への補助金を設けてガソリン価格上昇の抑制、輸入した小麦の売り渡し価格を据え置きすることによる小麦価格の維持、さらには電気料金高騰対策などが行われました。ただ、これらの政策では現状を打開することはできず、現実問題として今もなお物価は上がり続けています。
例えば、電気料金は対策が講じられたものの、ほとんど変わらない地域、さらには約5割上昇した地域さえあります。政府の対策が焼け石に水であることの証左と言えます」