寿司が1貫59円から!一大勢力を築く「寿司居酒屋チェーン」独自の出店戦略
居酒屋チェーンとしてTOP5に入る287もの店舗(2022年7月現在)を展開している「や台ずし」という居酒屋チェーンをご存知だろうか。
さほど、馴染みのないように思える同チェーンは、都内に40もの店舗を構えながら、山手線沿線にはわずか1店舗(神田駅西口町)しか存在しない。この都心を避けた出店の特徴はどういった発想から生まれたのか。運営する株式会社ヨシックスホールディングス取締役の伊達富夫氏に独特な出店戦略の秘密を聞いた。
「田舎戦略」で家賃比率を抑える
「都心ではなく住宅地に出店しているのは、それこそ『屋台』のように気軽に来店できる店を目指しているから。イメージでいうとランニングシャツに短パンのおじさんが、気を使わずにカウンターで、寿司をつまみながら飲めるような感じですね(笑)」
確かに、オフの格好でターミナル駅の居酒屋に出ようとは思わないが、近所にあれば気軽に利用ができる。店のコンセプトとしてだけではなく、運営戦略としてもローカルな展開がマッチしているという。
「出店する際の目標として、売上に対する家賃比率を7%台に抑えることで利益を出しています。一般的な繁華街で同じくらいの飲食店を出すとなるとその比率は10%程度になると思います。渋谷や新宿などターミナル駅の近くになると15%くらいまであがります。毎月かかるものなので、これを抑えられるのは大きいです。会長はこれを『田舎戦略』と呼んでいます」
自前の店作りで急成長
それでもハイペースで出店を繰り返せば、設備投資もかさむことは避けられない。その点、「や台ずし」は「本来の業態」でカバーされるので通常より安い価格での出店が可能なのだと伊達氏は話す。
「弊社はもともとは建築会社なんです。そのため、内装を自前で作れるので出店費用がかなり抑えられるんです。完成後の修繕も社内で担えるし、コミュニケーションも密にとれるので、効率的に完成にたどり着けます。あとは、多少変な形の物件でも乗り切れるということもあります(笑)」
母体が建築会社であるメリットは出店時だけでなく、修繕も自前で完結できるため運営中も活かされるワケだ。さらに、店舗の売り上げが下がって来た際にもメリットがあるというが、一体どういうことだろう。
「出店してみて、売り上げがうまくいかないときに大きく舵をきる判断も早くできます。最短で、オープンから1か月半程度で『これは違うな』となって業態転換したこともあります。弊社は『や台ずし』以外にもいくつかの業態を持っているので、別ブランドに切り替えていくということです」