ベーシックインカムで救われるか?コロナとAI失業の“W危機”で困窮者が増加
2020年に実施された10万円の一律現金給付を皮きりに、困窮者救済の打開策として“ベーシックインカム”(すべての国民に対して、一律に現金を給付する施策)が取り上げられる機会が増えた。
実際、日本維新の会、れいわ新選組は導入に前向きの姿勢を見せ、衆院選の公約にもしている。しかし、各政党ともに給付額や財源には差異があり、正直言って非常にわかりにくい――。
ベーシックインカムが注目される訳
そもそもベーシックインカムに目が向けられるようになった背景には“AI”の台頭がある。
ここ数年、各メディアは“AI失業”といった言葉を用いて「AIに奪われる・奪われない仕事は?」といった特集を頻繁に組み、それと並行してIT化によって職を奪われた人が安心して暮らせる制度としてベーシックインカムが注目されるようになった。
各政党が掲げるベーシックインカムの注意点、理想的な運営方法を聞いた前回の記事に続き、今回は労働市場の変化に伴うベーシックインカム導入の必要性、今後の目指すべき働き方を紹介する。
前回に引き続いて話を聞いたのは、駒澤大学経済学部准教授の井上智洋氏(@tomo_monga)だ。
AI以前は、ITに仕事を奪われるケースが
日本では2016年ごろからAIが注目されるようになったが、「すでに世界ではAIに仕事を奪われるケースは珍しくありません」(井上氏、以下同)とのことだ。しかし、その前からITによる失業が世界的に進行していたという。
「アメリカの場合、21世紀に入ってから、コールセンターや旅行代理店の事務スタッフ、経理係の雇用がIT化によって減少しています。AI化による失業は、金融業界で顕著です。保険の外交員や証券アナリスト、資産運用アドバイザーといった仕事の雇用が減っています。
他にも、裁判に必要なデータやテキストを抽出する“パラリーガル”(弁護士助手)という職業も、AIを活用すればちゃちゃっと用意してくれるため、雇用の減少は避けられません」