「俺たちの命の値段は5000円」コロナ病床の清掃業者、悲痛な叫び
新型コロナウイルスの第4波が襲来し、再び国内の医療現場がひっ迫している。医療現場の負担を少しでも減らすため、看護師や医療スタッフが行っていたコロナ病床の清掃業務を外部に委託する動きが出ている。
しかし、2020年12月に厚生労働省が業界団体を通じて行った調査によると、コロナ病床などの清掃に対応できると答えた清掃業者は、全国1000の事業所のうち88社のみ。全体の1割未満となっている。
「誰もやりたがらないでしょう。コロナ病床の清掃をしたって、何もいいことがないんだから」
そう話すのは、都内のビルメンテナンス会社に勤める藤田治さん(仮名・36歳)。藤田さんはその会社で清掃業務を担当。現在は首都圏のとある病院で、コロナ病床の清掃リーダーをしている。
命がけのコロナ病床清掃の実態
コロナの流行が本格化し始め昨年3月。藤田さんが働く会社は、以前から付き合いのある病院からコロナ病床の清掃依頼を受けた。
「俺は『やりたくない』と言ったんだけど。会社が病院の依頼を受けた以上、現場が嫌だと言ってもやらなきゃならないんだよ」
コロナ病床の清掃は、手探りのなかで始まったという。未知のウイルスに対して、何が有効なのかわからない。次亜塩素酸、消毒液など、「考えつく限り」の方法で部屋の消毒を行った。
清掃中は防護具を着用し、徹底した感染対策が行われる。それでも感染リスクはゼロではない。言わば、「命をかけて」コロナ病床の清掃をしているのだ。当然、通常の清掃業務よりも高い受注額だと考えるのが普通だろう。
「破格の安さ」で依頼される理由
しかし、藤田さんの会社は「破格の安さ」で病院からコロナ病床の清掃を依頼されている。
「ほかの会社は、コロナ病床の清掃をひと部屋4万~5万円で請け負っているみたい。でもうちの会社は、5000~1万円で依頼されている。あまりにも安いでしょ。これでも前よりは高くなったんだよ」
病院側は以前から、藤田さんの会社に対して「買いたたき」を行っていたという。
「俺たちの業務範囲じゃないのに、一銭も受け取らずに俺たちがやっている業務はたくさんある。昔からそういう体質の病院だったから、何を言ってもいまさらなのかもしれない。病院側が適正な値段を支払わない」