韓国・中国人がアカデミー賞で躍進。日本の映画界が負けている深刻理由
2021年4月25日夕(日本時間26日午前)、アカデミー賞の発表があり、最高の栄誉である作品賞はクロエ・ジャオ監督『ノマドランド』が受賞した。監督賞はクロエ・ジャオが、主演女優賞は同作主演のフランシス・マクドーマンドが受賞し、『ノマドランド』が最多の3冠を達成。女性監督が監督賞を受賞するのは2人目であり、アジア系の女性監督の受賞は初めてだった。
そして、韓国系移民2世であるリー・アイザック・チョン監督作品『ミナリ』で、ユン・ヨジョン氏が助演女優賞を韓国人俳優として初めて受賞。こちらもアジア系の女性2人が快挙を成し遂げるアカデミー賞となった。
昨年は韓国人、今年は中国人の監督が作品賞・監督賞
昨年の作品賞・監督賞受賞作はポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』。アジア出身の映画監督が2年連続でオスカーを受賞した結果となったが、なぜ、日本人監督はこの賞レースに乗っていないのか。今回のアカデミー賞受賞作品は2つともアメリカの製作会社で作られたものであり、たまたま監督がアジア人であっただけと評価することもできるが、日本映画の元気のなさはかつての隆盛期と比べると否めない。
例えば、日本映画の全盛期であった1950年代には黒澤明監督『羅生門』(‘50)、衣笠貞之助監督『地獄門』(‘53)、稲垣浩監督『宮本武蔵』(‘55)が、現在の外国語映画賞の前身である名誉賞を受賞していた。しかし、過去20年を振り返ると、アニメ部門の活躍は目に付くが実写映画はノミネート、受賞共にほぼない状態である。
一方で、日本映画はアカデミー賞にはエントリーされないものの、中国、韓国映画と共に世界三大映画祭(ヴェネツィア・カンヌ・ベルリン)ではたびたび名前が挙がる。これは、世界三大映画祭は、優秀作を売買するマーケットとしての機能を有している一方で、アカデミー賞は「国際映画祭」ではなく、「アメリカ映画の発展を目的とした成果を称えるための映画賞」であり、アメリカ国内で公開された作品しか選考対象にはならないことによるものである。
よって、アカデミー賞の受賞がないことを理由に日本映画の質を論じることは早計なのだが、アカデミー賞の影響力は大きく、同時に同賞にノミネートされるか否かは「全米で支持を得た=収益を得たか」という基準にもなろう。
映画市場も中国が世界2位の大きさに
また、単純に興行収入の数字を見比べてみても、中国は日本を抜いてGDP世界第2位に躍り出たように、映画市場も世界第2位の市場になっている。2020年は新型コロナウィルスの影響を受けて興行収入が落ち込んだものの、8月公開の「八佰(The Eight Hundred)」は興行収入4億6130万ドル(約436億円)で興行収入世界1位となり、トップ10には他に2作品がランクインしている(ちなみに、昨年の日本最大のヒットの『鬼滅の刃』は3億1840万ドル<約326億円>で第5位)。
1年の正月休みは12億8200万元(約204億円)に上り 、正月休みにおける興行収入の歴代最高記録を更新。そして、韓国映画の国内市場規模は人口の差もあることから、中国には及ばないが、海外で好調なセールスを記録している。一方、日本映画が海外で頻繁に上映されているわけではない。一体この差はどこにあるのだろうか。