バイデン政権誕生でも、イラン核問題の解決には困難が山積み
2021年1月20日、アメリカ合衆国大統領に就任したジョー・バイデン氏は、2015年に交わされた「イラン核合意」(※)への復帰を公約に掲げている。つまりこれにより、対イラン政策はドナルド・トランプ政権の4年間とは違ったものになる。
イランのハサン・ロウハニ大統領はアメリカ大統領選挙の開票作業中の2020年11月4日、「次の大統領が誰であろうとアメリカが国際協調路線に戻ることを願う」との認識を示した。そして経済制裁が解除されれば、対米関係で変化が生じる可能性にも言及した。
(※イラン核合意:2015年7月に、イランと米英独仏中ロが結んだ合意。イランがウラン濃縮活動など核開発を大幅に制限するかわりに、米欧が、イランに対する経済制裁を解除することとした。だが、オバマ政権時代のこの合意から、2018年5月にトランプ大統領(当時)が離脱して制裁を再開。反発したイランは、合意に反するウラン濃縮活動を再開した)
バイデン政権でイラン情勢に変化
また、イラン最高指導者のアリ・ハメネイ師も12月16日に、「ハサン・ロウハニ大統領率いるイラン政府はすぐにアメリカを信頼するべきではない」としながらも、バイデン氏の核合意へ復帰する姿勢を評価。対イランの経済制裁が解除された場合には、それに対応していくべきだとの考えも示している。
だが、最近のイラン情勢を見ていると、ロウハニ大統領とハメネイ師、そしてバイデン大統領の思うようにはいかない可能性が浮上している。
トランプ大統領(当時)は2020年12月23日、イラクの首都バグダッドにあるアメリカ大使館がロケット弾で再び攻撃された件に言及し、「もし米国人が1人でも殺害されればイランに責任を取らせる」とけん制している。
トランプ前大統領の発言の背景は
このロケット弾攻撃の実行組織は分かっていないが、イランは中東地域を覆うシーア派の弧を作るべく、イエメンのフーシ派やレバノンのヒズボラ、バーレーンのアル・アシュタール旅団、イラクのカタイブ・ヒズボラなど親イランのシーア勢力を軍事的・財政的に支援している。また、アフガニスタンやパキスタン出身のシーア派民兵をシリアやイラクに送り込んでいる。
イランは11月27日、テヘラン郊外で核開発において主要な役割を担ってきた核科学者モフセン・ファクリザデ氏が暗殺されたことを受け、イスラエルの関与を指摘し、「適切な時期に報復する」と明言した。
その直後の12月2日、イラン国会では保守強硬派の主導で、国連による核施設への査察停止や核開発の拡大を求める法案が可決された。ファクリザデ氏の暗殺によって、保守強硬派はイスラエルやアメリカへの敵意を強め、同派の勢いが議会内でも強くなっている。