イスラエルがUAEと国交正常化。背景にあるトランプ大統領の思惑
9月15日、イスラエルとUAE、バーレーンの国交正常化を記念する署名式がホワイトハウスで開催された。署名式には各国の首相が出席し、今後イスラエルとの間で経済分野での関係が進展することになった。
イスラエルと国交を持つアラブ諸国はエジプトとヨルダンを加えた計4か国となるが、トランプ大統領は複数のアラブ諸国がさらにイスラエルと国交正常化すると示唆している。なぜ、今こういった流れが進んでいるのか。そこにはいくつかの国の思惑がある。
大きな壁に直面する産油国
まず、近年、中東の石油は米国のシェール革命などもあり、以前に比べ各国を魅了する経済的武器ではなくなっている。莫大なオイルマネーがUAEやカタールといった産油国を経済的に潤わせてきたが、今後はそう簡単ではない。そして、新型コロナウイルスの感染拡大で石油需要は減少しており、産油国は大きな壁に直面している。
このような状況でアラブ諸国は経済の多角化を押し進めたい狙いがあり、特に最先端技術を駆使して高い経済成長を続けるイスラエルは魅力的な存在となる。UAEとバーレーンがイスラエルと国交正常化した背景には、正にこれだ。
今回、イスラエルとの国交正常化に入植地の撤廃やパレスチナの国家承認を前提条件とするなど、アラブの大義理念より実利をアラブ諸国が重視しているとの見方がある。しかし、中東では2019年にガソリン価格の値上げを発表したイランで反政府デモが拡大し、レバノンでは「WhatsApp(ワッツアップ)」など無料通話アプリへの課税を巡って市民の怒りが爆発した。
アラブ各国政府は原油安で経済難が深刻になり、国民からの不満がいっそう高まることを警戒している。サウジアラビアやUAE、バーレーンは、イランやレバノンが失敗した轍を踏みたくないとの本音があるだろう。
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