休業手当が出ない、在宅で効率が落ちた…人事制度への不満が噴出中
「シフトが決まっていないパート社員にどう休業手当を支払えばいいの?」「正社員とアルバイトパートで休業手当の支払い率が違うのですが問題になりますか?」
飲食チェーンを展開している会社で人事担当をしている斎藤さん(仮名)は、コロナ禍で頭を抱えており、社会保険労務士である筆者のもとにこんな相談を投げてきました。
バイト・パートでも休業補償をもらう権利はあるのに
その会社は、緊急事態宣言が出されてから店舗を休業せざるを得ない状況となり、売り上げは前年比で90%減になったそうです。
その人事担当者は「シフトが決まっていないアルバイトに、休業手当はどう払ったらいいの?」「実態としてシフトに入っていない“休眠パートスタッフ”にも休業手当を払う必要があるの?」などの悩みも抱え、頭を抱えていました。
実際、筆者は現場で働くアルバイトスタッフから「正社員と同じくらいシフトに入っていても、休業手当はアルバイト基準になりますか?」など、冒頭のような質問を受けるケースもあるのですが、それはごく一部。
ほとんどのスタッフが「“身分”が違うのだから支給率も差があって当然だ」と考えていたのです。ところが実際は、支給率に差を設けることは「同一労働同一賃金の観点から問題」なのです。
労働局への労働相談が6倍に
コロナ禍で企業はさまざまなイレギュラー対応を求められています。資金繰りの問題や法的な知識がなく、どのように対応したらよいかわからず、適切に労務周りの案件に対処できないと、さまざまなリスクが表面化します。
2020年2月には、新型コロナウイルス感染症の影響による休業や解雇、雇止めといった労働相談をすることを目的として、各都道府県労働局に特別労働相談窓口が開設されました。すると窓口に寄せられる相談件数は、4月以降、3月までと比べて3~6倍に急増しています。
別の飲食業を営む会社では、従業員から「休業手当を正社員と同じ比率で支払ってください」といった申し出を受けるケースもあり、特に飲食、サービス業の間ではユニオン(合同労組)に駆け込む人も少なくありません。
ユニオン側としても、1人の労働者で勝ち取れる金額が少ないことから「団体で交渉したほうが会社に対して主張が通りやすい」と、同じ境遇にいる同僚に声をかけるように勧めるところも少なくないです。