英語民間試験で批判が殺到したベネッセ。企業体質に不安も
ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)といえば、「こどもちゃれんじ」「進研ゼミ」のDMに付いてくる漫画が記憶に残っている人も多いでしょう。また、健康経営にも積極的で、働きやすい企業としても知られています。
しかし、その一方で、2021年1月から導入予定の大学入試共通テストにおいて、関連会社が記述式問題の採点アルバイトを公開で募集したり、ベネッセ自身が採点業務を受託したことを明かしたうえで、自社商品を学校側に営業したことが問題視されています。また、2014年には顧客情報漏洩事故を引き起こしています。
なぜこのような状態になったのでしょうか。公開情報を踏まえて「ブラック企業アラート」運営者の當瀬(とうせ)ななみが、その背景を分析します。筆者は、本業でwebサービス・アプリのプロダクトマネージャーに従事する傍ら、ご依頼いただいた会社の公開情報を調べてコメントをするサービスを運営しています。
調査観点について
企業調査をするにあたって、私の場合は下記3点について調査・判断しています。
・ビジネスモデル…その会社の将来的な成長可能性、潰れにくさを見るため
・社長の人物/キャラ…トラブルが多い人物だと会社もトラブルに巻き込まれやすいため
・社風…実際に働いてみた時の雰囲気が合うかを把握する必要があるため
今回も同じ観点で調査を進めていきます。
1)ビジネスモデル:少子化で生き残りをかける教育産業
ベネッセは教育領域の商材を中心に扱う企業のため、教育業界の動向について確認します。
経済産業省が作成した「『未来の教室』とEdTech研究会」によれば、日本の民間教育産業の市場規模は毎年約2.5兆円前後と言われており、ほぼ横ばいです。
ただし、市場の対象者数は少子化の進行によって縮小傾向にあります。そのため、市場が自発的に拡大・伸長する要素は少なく、各企業の自助努力が特に求められる環境であると言えます。
引き続いて、ベネッセの財務状況を見ます。ただし、ベネッセ自体はベネッセホールディングス(以下、ベネッセHD)の子会社であり、ベネッセHDはグループ全体のIR情報を持っているので、ベネッセHDのデータを中心に確認していきます。
ベネッセHDのIRで公開されている事業セグメントは、
・国内教育事業
・グローバルこどもちゃれんじ事業
・介護・保育事業
・ベルリッツ事業
・その他
の5つに分かれています。そのうちベネッセが担当している領域は「国内教育事業」「グローバルこともちゃれんじ事業」の2つが相当するので、これらを中心に読み解いていきましょう。