台風19号で地方鉄道が被災。ローカル路線が生き残るためには
10月12日、東日本を中心に大規模な被害をもたらした台風19号。活発な雨雲が大きく、各地で洪水や土砂崩れ、河川の氾濫が相次いだ。国土交通省によると、河川の決壊箇所は59箇所に登る(10月16日午後)。鉄道にも深刻な爪痕を残している。とりわけ地方の路線では、河川の決壊や増水により、線路の土台が流出・鉄道橋が崩落するなどの被害が生じた。
bizSPA!取材班では、今回の台風による地方鉄道の影響について、鉄道に詳しいライターの鼠入昌史さんに話を聞いた。
地方鉄道の弱点。台風被災は起こりうるもの
台風19号の影響で運休を余儀なくされている鉄道は、10月25日の時点で7鉄道会社・16路線に及び、そのうちの大半が地方を結んでいる。鼠入さんは地方鉄道への被害について、「台風の規模の大きさということもありますが、“起こりうる”ものだったと言えるでしょう」と話す。
「基本的に鉄道は自然災害に弱い交通機関です。例えばクルマであるならば、道路さえなんとかなっていれば走ることができます。ですが、鉄道の場合は橋梁やトンネルなどはもとより、線路やそれを支えている路盤、信号設備や電気設備、駅などの施設などが揃っていなければ走れないからです。
とりわけ、地方のローカル線は沿線が開発されていなかったり一面田園地帯だったりするような場所を走っており、土砂崩れや河川決壊の影響をダイレクトに受けることになります。計画運休などの話題もあって都市部ばかりが注目されますが、こと鉄道に関してはほぼ間違いなくローカル線が大きなダメージを受けることになります」
被害が顕著だったのは、長野県の千曲川の増水で橋梁流出の被害を受けた上田電鉄別所線だ。同社は10月16日、橋梁の復旧作業に本格的に着手するとともに、「復旧に1年以上かかる」との見通しを示した。また、10月20日には災害支援口座を開設。公式HP上で寄付を募っている。
「あまちゃん」の舞台になった地方鉄道も
東北でも長期運休を余儀なくされた鉄道がある。久慈―盛をむすぶ、岩手県の三陸鉄道リアス線だ。同路線は東日本大震災の津波被害を受け、今年3月にようやく全線復旧に至ったばかり。沿線が連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台となり一時は人気を取り戻したが、今回の台風で再び土砂流入や地盤流出などの被害を受けた。10月23日の時点で被災箇所は77箇所。路線総距離163kmのうち7割近くが運休し、バス代行で対応している。同社は優先度を見極めながら復旧工事を進め、順次運行区間を延伸させる予定である。三陸鉄道もHP上で義捐金支援を呼びかけている。
「鉄道は、都市部の一部の路線を除いて、大半が山中や海沿いなどの自然の中を走っています。台風による被害を事業者がどこまで想定していたかはわかりませんが、事前にあらゆる事態を想定した設備投資を事業者自らが行うことは、利用客数を勘案しても難しいです。
そのため、自然災害が想定を超えるような事態が続いている昨今では、税投入による施設の強化・復旧に対する支援が必要になってくるでしょうし、利用者としても災害そのものから身を守ることはもちろん、災害後に公共交通がダメージを受けるであろうことはある程度想定しておいたほうがいい時代になっているのかもしれません」