「未成年だから大丈夫」は通用しない。いじめ動画と法律のリアル【弁護士が解説】

いじめの様子を撮影した動画が、SNSで拡散され問題になるケースが後を絶ちません。「未成年だから大丈夫」「ふざけていただけ」と軽く考えてしまいがちですが、その判断は大きなリスクを伴います。加害者本人だけでなく、撮影や拡散に関わった人、周囲の大人にも責任が及ぶことがあります。いじめ動画を巡る法的な線引きと注意点を、アディーレ法律事務所の正木裕美弁護士に解説していただきました。
目次
【Q1】加害者が未成年の場合でも、行為の内容によっては法律に違反すると判断されるのでしょうか。年齢による扱いの違いも含めて教えてください。
20歳未満の者を「少年」とよびますが、少年事件の手続きは更生を重視した少年法が適用されるため、成人の刑事裁判とは異なります。少年事件は、家庭裁判所に送致されて少年審判を経て保護処分を受けるのが原則です。
しかし、少年が一切刑事裁判を受けないというわけではなく、14歳以上の少年は、家庭裁判所が刑事処分を与えるのが相当だと判断したときは、検察官に送致され(逆送)、起訴されて有罪判決を受けると刑罰が科されます。
また、原則として逆送扱いとなる場合もあります。犯行当時16歳以上の少年が故意の犯罪によって人を死亡させたとき(殺人罪、強盗致死罪、傷害致死罪など)は原則として逆送することとされています。さらに、民事では成人となる犯行当時18歳・19歳の少年は「特定少年」とされ、通常よりも原則逆送事件の対象が拡大されています(死刑、無期または短期1年以上の拘禁刑の罪の事件。現住建造物等放火罪、不同意性交等罪、強盗罪、組織的詐欺罪など)。
ただし、14歳未満の少年は、刑事責任能力がなく刑事責任は問われないとされているので刑罰が科されることはありませんが、家庭裁判所で保護処分を受けることになります。
【Q2】動画の撮影や拡散など、直接手を下していなくても、犯罪に問われることはありますか?
はい、動画の撮影、投稿、拡散、いずれも犯罪リスクの高い行為になりえるので注意が必要です。
近年SNSによる動画の拡散が続いていますが、無断で撮影すること自体は犯罪ではなく、肖像権侵害として民事の問題になるのが原則です。しかし、直接手を下していなくても、動画を撮影することで実行犯を精神的に助けた場合は、「幇助」として直接手を下した者と同じ罪に問われる場合があります。
また、投稿は、内容が真実であっても、不特定または多数に対して他人の社会的評価をおとしめる情報を広めると、名誉毀損罪に問われることがあります。投稿した意図が問題を知って欲しいということだったとしても、いじめや犯罪を行っている動画をネット上に投稿すれば、不特定多数の人が閲覧でき、加害者の社会的な評価を下げる可能性が高いため、名誉毀損罪に該当する可能性があります。
拡散についても、民事での判断ではありますが、リツイートが名誉毀損になると示した判例があります。動画の内容が名誉毀損罪に該当する違法なものである場合、拡散するとさらに広範に社会的評価を低下させる動画を広げることになるので、投稿者と同じく罪に問われることがあります。
特定の少数の友人間でだけ共有した場合でも、その人を介して広がる可能性があれば名誉毀損罪は成立しえます。また、ネット上に公開したがアクセス数が少なく少人数にしか閲覧されていない場合でも、不特定多数が閲覧できる状況にはあるので、この場合も名誉毀損罪は成立しえます。
【Q3】「ふざけていただけ」「ノリだった」という説明は、法的には通用するのでしょうか?

いえ、加害者側が一方的にそう思っていても通用しません。
暴行事件の場合、悪意や害意があることは暴行罪や傷害罪が成立するための条件ではありません。加害者が「ふざけていただけ」「ノリだった」とか「犯罪になるとは知らなかった」と述べることは珍しくはありませんが、犯罪になる自覚がなかろうが、単なる言い訳であろうが、相手の身体に触れることは認識していますから暴行罪が成立しえますし、暴行の結果相手を怪我させていれば傷害罪が成立することになります。
また、「法律の不知はこれを許さず」という大原則があり、法律を知らなかったことを理由に罪を逃れることはできません。常識的に考えても、熱心に勉強をして法律を知っている方には犯罪が成立し、そうでない方は免れることができるというのは余りに不公平ですよね。
なお、いじめ防止対策推進法のいじめの定義は、被害生徒の心理的、物理的影響を与える行為で被害生徒が心身の苦痛を感じているものとされていますが、加害生徒側がいじめや犯罪と認識していたことは求められていません。
加害者にはいじめや犯罪だという認識が乏しいことも多くありますが、「ふざけていただけ」「ノリだった」と言ったとしても逃れられない法的責任は色々あります。年齢や場面を問わず、常に自分の言動を俯瞰で捉えられるよう意識することはとても重要です。
【Q4】当事者本人だけでなく、事情を知りながら関与・黙認した周囲の人や、保護者にも責任が及ぶことはありますか?
直接全部自分が手を下していなくても罪に問われることは十分にあります。
犯罪計画に関与したり(共謀共同正犯)、役割分担するなどして他の人と共同して犯罪を行ったり(共同正犯)、そそのかして実行犯に犯罪を決意させて犯罪を実行させたり(教唆犯)、実行犯を物理的・心理的に手助けすると(幇助犯)、それも犯罪として処罰されるのです。
犯罪に加担していなくても、暴行によって被害者が怪我をしたり命を落とした現場で、暴行の最中に「もっとやれ」「いいぞ」などと囃し立てていた場合は、現場助勢罪という犯罪が成立する可能性があります。
一方、未成年の子どもが犯罪を犯しても、事件に関係のない保護者が刑事責任を負わされることはありません。
しかし、民事では保護者が監督責任を問われる場合があります。個人差はあるものの、民事上は小学校を卒業する概ね12歳前後で未成年者は責任能力を備えていると判断されることが多いのですが、子どもが責任能力を備えていない場合、子ども本人は責任を負わず、被害者に対して賠償責任を負うのは法的に監督責任を負う保護者であり、監督義務を果たしていたと証明できない限り責任を逃れることはできないとされています。
これに対し、未成年の子どもに責任能力が認められると、原則として子ども本人が賠償責任を負いますが、黙認していた、損害を加える傾向があったのに教育を怠っていたなど保護者に監督義務違反と損害との間に相当因果関係があるとされると、親も賠償責任を負うとされる場合があります。
■解説者プロフィール:アディーレ法律事務所 正木裕美 弁護士
一児のシングルマザーとしての経験を活かし、不倫問題やDV、離婚などの男女問題に精通。TVでのコメンテーターや法律解説などのメディア出演歴も豊富。コメンテーターとして、難しい法律もわかりやすく、的確に解説することに定評がある。
[協力]
アディーレ法律事務所