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クマの被害にあったらどうする?ケガをしたら補償されるのか弁護士が解説

クマの被害にあったらどうする?ケガをしたら補償されるのか弁護士が解説

全国各地でクマによる被害が相次いでいます。人が襲われたり、農作物が荒らされたり、商店に侵入されるなど、被害は広範囲にわたっています。クマの被害にあった場合、その補償はされるのでしょうか? アディーレ法律事務所の近藤姫美弁護士に解説していただきました。

国や自治体に対して損害賠償を請求できる

――クマに襲われてケガをしたり、財産に被害を受けたりした場合、損害賠償などを求めて国や自治体を訴えることができるのでしょうか?

近藤弁護士:国や自治体に対して、国家賠償法に基づいて損害賠償を請求できる場合があります。

確かに、クマは、管理がされていない野生動物ではあるので、国や自治体は責任を負うことはなく、訴えることはできないのではないかという誤解をされがちです。

しかし、クマによる被害を受けることが予想できているような状況で、国や自治体がきちんと防護柵を設置したり、適時適切にクマを駆除することができたのに、国や自治体がそういった対策をしなかったからクマによる被害が発生してしまったといえる場合には、損害賠償を請求できる可能性があります。

反対に、クマによる被害があることがまったく予想できなかったといえる場合や、クマによる被害があることが予想できていたとしても、当時の状況としては国や自治体がどんな対応を取っていたとしても被害を防ぐことができなかったという場合には、損害賠償を請求することは難しいといえます。

治療費や慰謝料、休業損害等も請求可能

――ケガの場合、死亡の場合、店を荒らされた場合、車を壊された場合、農作物を取られた場合など、補償を受けることができますか? 受けられるとしたら、それぞれの補償額はどうなりますか?

近藤弁護士:補償額は、国や自治体がクマからの被害を予想することができた状態で、きちんとクマへの対策をしていたとしたら被害を防ぐことができたといえる部分についてのみ認められます。

ケガをした場合は、クマへの対策をしていればケガをしなかったといえる場合には、治療費はもちろん入通院慰謝料や休業損害等も請求できる余地があります。死亡の場合には、遺族への死亡慰謝料やクマからの被害がなければ生きられた年齢分の給与の額等を請求できる余地があります。

店を荒らされた場合や農作物を取られた場合、車を壊された場合は、クマからの被害が予想でき、かつクマへの対策をしていたら被害が生じなかったという部分について請求できる余地があります。どんなに対策をしても被害が避けられなかったと考えられる部分に関しては、賠償を求めるのは難しいでしょう。

野犬やエゾシカの被害に損害賠償が認められた例も

――クマ被害の具体的な裁判事例がありましたら教えてください。

近藤弁護士:クマ被害に関しては、具体的な裁判事例はまだ見当たりません。

ただ、野犬やエゾシカといった野生動物からの被害に関して、国家賠償法に基づいて損害賠償が認められた具体的な裁判事例は存在します。クマも野犬やエゾシカと同様に野生動物であり、クマから被害を受けた場合にはこれらの裁判事例と同様に、国家賠償法に基づいて損害賠償を請求することになりますので、参考になると考えます。

野犬については、野犬が徘徊をしており人身被害が予想できるにもかかわらず、国や自治体が適切な処置をしなかったため幼児が野犬の被害に遭い死亡したことについて損害賠償が認められました。

また、高速道路を走行中に車が野生のエゾシカと衝突した案件で、国や自治体が道路に適切な処置をしたとしたら衝突が防げたという件について、損害賠償が認められた例もあります。

近藤姫美(アディーレ法律事務所)
弁護士(埼玉弁護士会所属)。離婚、破産、交通事故、刑事事件など、多様な法律問題の解決を支援している。特に、「離婚・親権問題」の解決に強い信念を持ち、依頼者の「人生の再出発」を力強くサポートしています。

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アディーレ法律事務所

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