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AI時代に求められる人事的観点とは?「科学的人事アワード」授賞式

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AI時代に求められる人事的観点とは?「科学的人事アワード」授賞式

AIの進化や人的資本開示の義務化、ジョブ型雇用の拡大など、企業を取り巻く環境が急速に変化する中、人事の役割はかつてないほど進化を求められています。2025年11月27日に開催された「第4回科学的人事アワード」では、タレントマネジメントシステム「タレントパレット」を導入する約4,500社の中から、人材データを活用した先進性、企業成長への影響度、経営と人事の連動性、一般企業に有益かつ再現性のある取り組み内容などの項目で総合的に評価し選定された7社が表彰されました。先進的な人材戦略を実践する受賞各社の取り組みからは、AI時代において企業と個人が成長し続けるための具体的なヒントが見えてきます。

人的資本経営に必要なのは「データ」と「文化」の両輪

受賞企業は、コスモエネルギーホールディングス、三菱重工業、プルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパン、オプテージ、サッポロビール、セガサミーホールディングス、三越伊勢丹ホールディングスの7社。

授賞式の総評で慶應義塾大学大学院経営管理研究科講師・山形大学客員教授の岩本隆氏は、経営としての人材マネジメントの取り組みが増えてきたことや人的資本経営の実践のための戦略的組織が作られてきていること、自律的キャリア形成が企業文化へ昇華されてきたことの3点を指摘。人的資本経営の実現には、データドリブンな管理と組織文化の変革が不可欠と述べました。

また、人的資本ROI向上には、人件費と営業利益のバランスが重要で、経営戦略と連動した説得力のある人材戦略によってコーポレートガバナンス改革を進めていくことが成長につながるとして、企業への期待を示しました。

受賞企業が示す3つのキーワード

(1)経営と人事の連動
コスモエネルギーホールディングスは、7,000名の人材データ基盤を整備し、経営戦略と人事戦略を一体化させました。社員のスキルや後継者情報を可視化することで、挑戦できる環境を整え、変革期の成長を支える基盤を築いています。

経営と人事が同じ方向を向くことは、変化の激しい事業環境で生き残るための必須条件となっています。

(2)HRBPの重要性
三菱重工業は、HR部門を戦略企画、制度設計、事業浸透、オペレーションに再編し、HRビジネスパートナー(HRBP)制度を導入。5万人のデータを横断的に可視化し、感覚ではなくデータに基づく意思決定を支援しています。

HRBPは、全社的な人材最適配置やサクセッションプランを担う存在で、日本企業では不足している役割として改めて注目が集まっています。

(3)AIと人の掛け合わせ
AIの活用も明確なトレンドとなっています。オプテージは、AIアドバイス機能を人事評価に取り入れ、上司と部下のコミュニケーションの質を高める取り組みを開始。

AI活用は、社員の潜在能力を引き出す支援や、納得度の高い評価へとつながっています。

個人が育つ環境づくりの重要性

三越伊勢丹ホールディングスは、31社に学習プラットフォームを提供し、1万6,000人がeラーニングを受講。従業員一人ひとりの成長と会社の成長の両立を進めています。

セガサミーホールディングスでは、グループを横断したHR変革を推進。社員が主体的に挑戦可能な環境を整備し、マルチカルチャー人材の育成に注力しています。

現代のキャリアは「会社に決めてもらうもの」から自ら選び取り、自律的に築く時代へシフトしているといえます。

今後のキャリアで求められる3つの能力

科学的人事アワードに登壇した企業に共通していたのは、次のような価値観でした。

・人事は管理部門ではなく事業成長のドライバーである
・キャリアは「会社が決める」から「社員が描く」へ
・AIは人を評価するためではなく、成長を支援するために使う

そこからは今後のキャリアで求められる次の3つの能力が浮かび上がってきます。

・データを読み解き意思決定に生かす力→感覚に頼らないマネジメントが前提に
・自ら機会を掴み学び続ける力→変化が早く、スキルが陳腐化する時代
・越境して価値を生む力→部署や会社を超えたコラボレーションが競争力に

人事が変わると組織は変わる。そして組織が変われば、ビジネスパーソン一人ひとりの可能性も広がります。AI時代に問われるのは、自ら学び、キャリアを切り開く覚悟といえるかもしれません。

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