bizSPA!

婚活アプリで独身偽装の男性に55万円支払い命令!「貞操権」とは何かを弁護士が解説

婚活アプリで独身偽装の男性に55万円支払い命令!「貞操権」とは何かを弁護士が解説

婚活マッチングアプリで「独身」と偽っていた既婚男性に対し、大阪地方裁判所が原告の女性の貞操権侵害を認め、約55万円の損害賠償の支払いを命じたと報じられました。このケースに関連して、「独身」と偽っていた既婚男性の罪や「貞操権」とは何か、貞操権侵害の慰謝料の相場について、アディーレ法律事務所の池田貴之弁護士に解説していただきました。

「貞操権」とは誰と性的関係を持つかを自分の意思で自由に決定できる権利

ーー男性を独身だと思って交際していた女性は貞操権の侵害を主張して提訴したとのことですが、「貞操権」とは何ですか?

池田弁護士:聞きなれない言葉かと思いますが、「誰と性的関係を持つかを自分の意思で自由に決定できる権利」のことです。

相手男性が既婚者と知っていたなら性的関係を持つことがなかったのであれば、独身と偽られたことによって自由な意思決定を侵害されたということになります。

LINEのやり取りや写真が交際関係の証拠に

ーー交際関係にあることを証明するには、どのような証拠が必要ですか?

池田弁護士:交際関係を証明するには、通常LINE等のやり取りや、2人でデートに行った際に撮った写真などがあり得ます。もっとも、貞操権侵害請求をするには、性的関係を持ったことが事実として必要となるので、通常の交際だけでなく、ラブホテルに行ったことや、性的関係を持ったことがわかるようなやり取りが残っている必要があります。

独身偽装は詐欺罪や不同意性交等罪にならない

ーー男性が既婚者なのに独身だと偽ったことは、詐欺罪や不同意性交等罪にはあたらないのでしょうか?

池田弁護士:結論から述べると、刑事上の詐欺罪や不同意性交罪に該当する可能性は低いです。というのも、詐欺罪であれば、欺罔行為(騙した行為)によって金銭をもらわなければ成立しませんが、貞操権侵害のケースにおいては金銭までもらっているということはまずないかと思われます。

また、不同意性交罪についても、性行為すること自体に対する同意はあったと考えられることや、脅迫や暴行によって性行為を結ばされたというわけではない限り、同罪になる可能性は低いでしょう。

慰謝料の相場は数十万円~百数十万円程度

ーー貞操権侵害の慰謝料の相場はどのくらいでしょうか?

池田弁護士:貞操権侵害における裁判例上の損害額としては、多いのは数十万円~百数十万円程度の認定となっていることが多いです。

今回の大阪地裁の裁判でも55万円(内5万円は弁護士費用分と思われる)の一部認容判決となっています。もっとも、よほど悪質なケースや騙していた期間が長期間に及ぶような場合には、200万円を超えることもあります。

騙されないようにする対策を

ーーマッチングアプリを利用する人が独身偽装に騙されないようにする対策はありますか?

池田弁護士:マッチングアプリという出会い方について、最近ではその利用者は急速に増えていますので、余計に注意が必要かもしれません。

最初の段階で、自身で注意できることは、相手方のアプリ上の登録名、LINE交換した際のアカウント名、本名を聞ければ本名にて、SNS上で検索をしてみて、ヒットしないかを確認してみるのがよいでしょう。

ヒットして、その中での投稿において、既婚者と思われるような投稿や、子どもと写っている写真があった場合、後々、相手の配偶者から、「これを見れば気づけただろう」などとも言われかねないので、その自衛の意味も含めて、相手のことを検索しておくことは重要だと思います。

また、相手に聞けるのであれば、勤務先なども確認して、相手の勤務先のHPをチェックすることもひとつの方法です。貞操権侵害請求の事案において、独身と偽る男性は勤務先を偽っていることも多々あるため、仮に嘘をついている場合には発見できる可能性があります。

池田貴之(アディーレ法律事務所)
弁護士。不倫問題や離婚問題といった男女間のトラブルを主に取り扱う。第一東京弁護士会所属。

[協力]
アディーレ法律事務所

おすすめ記事