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29歳で新規事業の責任者に!“個の力から社会の仕様を変える”カオナビ流マネジメントとサービス開発

29歳で新規事業の責任者に!“個を尊重する”理念が生んだカオナビ流マネジメントとサービス開発

タレントマネジメントシステムのリーディングカンパニーとして知られるカオナビは、「“はたらく”にテクノロジーを実装し、個の力から社会の仕様を変える」をパーパスに掲げる企業だ。社員一人ひとりの特性や強みを可視化し、組織全体のパフォーマンスを高める同社のシステムは、幅広い業界で導入が進む。そんな同社が開発した新規事業「ヨジツティクス」は、経営と現場をつなぐ予実管理システムとして注目を集めている。その立ち上げを29歳という若さで任されたのが、営業出身の菅原拓弥さんだ。現在はパートナーセールス本部本部長 兼 ヨジツティクス事業部のマネージャーを務める菅原さんに、未経験から責任者に抜擢された背景や、“個の力から社会の仕様を変える”というパーパスがキャリアと事業にどう通じているのかを聞いた。

「隣の領域」を知ることで広がった可能性

株式会社カオナビ ヨジツティクス事業部マネージャー・菅原拓弥氏
株式会社カオナビ パートナーセールス本部本部長 兼 ヨジツティクス事業部マネージャー・菅原拓弥さん

――営業職からキャリアをスタートし、企画職未経験で新規事業の責任者に抜擢されたそうですが、どのような経緯だったのでしょうか?

菅原:最初は営業として入社し、直販営業を経験していました。営業職としてある程度やりきった感があり、28歳のときに「別の領域を経験してみたい」と思ったのが転機です。

ちょうどその頃、新規事業「ヨジツティクス」の立ち上げが始まり、最初は営業面のサポートで関わっていました。ところが、リリース時期が近づくにつれて「どう売っていくか」「どう認知を得るか」といったマーケティングや事業設計の比重が高まり、経営陣から「責任者としてやってみないか」と声をかけてもらったのがきっかけでした。営業で築いてきた信頼や成果も評価され、挑戦を決意しました。

――営業以外のキャリアを経験したいと思われたのはなぜですか?

菅原:20代のうちはいろいろな経験を積んだ上で30代以降の方向性を決めたいと思っていました。営業は楽しかったのですが、マーケティングやカスタマーサクセスなど「隣の領域」を知ることで、自分の可能性を広げたかったんです。

マネジメントは役割、相手へのリスペクトを大切に

――企画職未経験から新規事業を任された際、不安やプレッシャーはありませんでしたか?

菅原:正直、不安はありました。社内でも初の新規事業で、進め方のルールや前例がなかったからです。ただ、悩んでいても仕方ないと思い、とにかく行動量を増やすことにしました。上司や経営陣とも密にコミュニケーションを取りながら、アクションを繰り返す中で、不安が少しずつ自信に変わっていきましたね。

――自分より年上のメンバーをまとめる立場として、意識していることはありますか?

菅原:マネジメントは「偉い・偉くない」ではなく、役割だと思っています。年齢や立場に関係なく、相手をリスペクトすることを大切にして、経験の長い方には学ぶ姿勢で接し、チームの心理的安全性を保つことを意識しています。こちらが構えてしまうと相手もやりづらいので、フラットな関係を心がけています。

――最近は「マネジメントをやりたくない若手」も増えています。挑戦を後押しする考え方はありますか?

菅原:僕自身、挑戦するときに「ダメなら戻ればいい」と思っていました。マネジメントは向き不向きがあるので、やってみて合わないと感じたら、スペシャリストとして別の道を選べばいい。重要なのは、会社が戻れる安心感を担保することです。心理的安全性があるからこそ、一歩を踏み出せるのだと思います。

「現場が使いやすいこと」を最優先にした予実管理システム

――予実管理システム「ヨジツティクス」を開発した背景を教えてください。

菅原:もともと社内では予実管理をスプレッドシートで行っていたため、手間やミスが多かったんです。そこを解消したいという現場の課題感が出発点でした。また、タレントマネジメント事業を通じて「経営戦略と人事戦略をどう連動させるか」という課題も感じていたので、経営と現場をデータでつなぐ意義もありました。

――特にこだわった機能やUX設計は何でしょうか?

菅原:経営企画部門ではなく現場の管理職が使いやすいことを最優先にしました。予実管理は経営のためではなく、現場で意思決定するためのもの。だからUIもシンプルにし、権限設定なども柔軟にしています。現場が自分ごととして予算を考えられる設計にこだわりました。

――現場の声はどのように反映していますか?

菅原:実際に現場の管理職が「これがあったら便利」と感じる機能を優先しています。たとえば、店舗ごとに利益やコストを可視化できるようにしたことで、現場が自律的に改善策を考えられるようになりました。

AI活用で早く正確な意思決定に対応

カオナビ「予実管理に関する調査」予算進捗の確認・報告頻度が高いほど、目標を達成している傾向
カオナビ「予実管理に関する調査」

――御社の調査で「予算進捗の確認頻度が高いほど目標達成率が高い」という結果がありました。これについては、どう分析されていますか?

菅原:今は不確実性の高い時代ですから、立てた予算を定期的に見直し、見込みを短いサイクルで確認することが重要です。頻度高く数字を確認できる企業ほど、変化に強く、意思決定のスピードも速い。そこが成長企業の共通点だと思います。

――今後、「ヨジツティクス」でもAIを活用されるそうですね。

菅原:はい。現在は予算項目ごとに残せる「コメント機能」があるのですが、今後はその内容をAIが自動要約したり、月次で予実の差分を抽出したりする機能を検討しています。将来的には、過去データをもとに予測や改善提案を行うことも視野に入れています。AIの力で、現場と経営がより早く正確に意思決定できるようにしたいです。

――最後に、今後の展望を教えてください。

菅原:まずは「ヨジツティクス」をカオナビの中でひとつの独立した事業として確立させることが目標です。その先には、現場の意思決定の質を高め、経営判断をより良くしていくという大きなビジョンがあります。現場の力で会社を変え、社会を変える――そんな循環を生み出すプロダクトにしていきたいと思っています。

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