川崎発・循環型社会へ挑む「MKKプロジェクト」とは?三菱化工機社長が語る変革への想い

1935年に川崎市で創業した三菱化工機株式会社。製造機能を持ったエンジニアリング企業として、都市ガス、水素、石油化学、半導体、各種の水処理など、さまざまな分野で求められる機械や設備を製作・建設し、社会の発展を後押ししてきた企業だ。その三菱化工機が、社会課題を解決するためのソリューション及びビジネスモデルを創出するプロジェクト「MKK PROJECT by 三菱化工機」を発足させた。
三菱化工機が90年にわたって培ってきた環境対応技術を基盤に、さまざまな分野の知見やアセットを掛け合わせ、5つの活動分野(スポーツ&カルチャー、環境・災害対策、食・医療、学び・人材育成、地域創生)において、多様な共創パートナーとともに、世界を循環型社会に変容させる事業を創出していくという。具体的な動きとしては、上智大学と「フード&エネルギーのサーキュラーエコノミー化」をテーマにした社会連携講座の開設や、2030年にオープン予定の川崎の新アリーナでのプロジェクトなどがプランニングされている。
この未来を描くプロジェクトについて、三菱化工機の田中利一代表取締役社長執行役員に話を聞いた。
公害を乗り越えた川崎から循環型エネルギーシステムを
――MKKプロジェクトの5つの活動分野の中に、「地域創生」が掲げられ、それが今回のプロジェクトの核を担っているとのことですが、地域社会と組む背景とそのメリットを教えていただけますか。
田中 当社は1935年の創業以来、川崎と共に歩んできています。日本の高度経済成長を支え続けてきた工業都市・川崎は、多様な文化や技術、人を育んできました。中でも、その時々の最新環境技術をもって公害を乗り越えてきた歴史や技術は誇るべきものがあります。
かつて公害で苦しんだ川崎から、最もクリーンな循環型エネルギーシステムを生み出す。そのような新しい取り組みに、自治体や企業、市民に至るまで地元一体となって挑戦・協業する土壌が川崎にはあります。
循環型社会の実現に向け、環境技術・製品の供給に留まらず、水素やバイオマスなど循環型エネルギーの需要創出と市場デザインを生み出し、世界へと展開し得る「場」は、川崎をおいてほかにないと考えています。
「技術で世の中をもっと良くしたい」という想い
ーー現場の若手社員の間で、今回のプロジェクトはどう受け止められていますか?
田中 本プロジェクトの社内スローガンは「技術を造るか。変革を創るか」。メーカーとして技術や製品を開発・提供する背景には、「技術で世の中をもっと良くしたい」という想いがあります。その想いを改めて呼び起こすとともに、会社の本気度を感じ取ってくれていると感じています。
――このプロジェクトで、「社会実装」や「需要側との接点」を大事にしている理由を教えてください。
田中 経済性を考慮せず、技術面だけで言えば「循環型社会」の実現は現在でも可能と考えます。しかし、効率やコスト面から見ると経済的に合わず、サステイナブルではないため、循環・継続し得る条件を満たすことはできません。そのため、エコノミクスも併せて持続可能な仕組み(ビジネスデザイン)をつくる必要があると考えています。
イノベーションは自らの殻を破ることから
――今回の新ビジネス戦略を基に、若手ビジネスパーソン向けに今後のアドバイスをお願いします。
田中 気候変動や自然災害、食糧問題や労働力不足など、世界規模で解決すべき大きな社会課題があります。それらを解決し、持続可能な社会を実現するためには、自社や一部の企業・団体が有する技術やノウハウによる個々の取り組みでは限界があります。
課題解決に向けた志を有したパートナーをいかに募り、協業していくことができるか。変化の激しいこの時代、まず自社や自身が自らの殻を破り、これまでの成功体験や常識、固定観念の外に飛び出さなければならない。イノベーションや新たな市場開拓は、まずはそこから生まれるのです。
企業と地域が共創することで描かれていく循環型の社会。その実現のためには、志を同じにする多様な人や企業が集うことが必須なのかもしれない。さまざまなアイデアと、それを実現するためにひとつずつ積み上げていく軌跡。MKKプロジェクトでは、地域社会とリンクしながら、未来に向けた一歩が刻まれていくのだろう。