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アメリカがユネスコ脱退へーー国際的枠組みからの離脱目立つ【やさしいニュースワード解説】

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アメリカがユネスコ脱退へーー国際的枠組みからの離脱目立つ【やさしいニュースワード解説】

在京の大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが時事ニュースをやさしく解説。今回は、「アメリカのユネスコ脱退」です。

アメリカがユネスコから脱退すると発表

アメリカの国際機関や国際的枠組みからの脱退が目立っています。 アメリカ国務省は7月22日、 国連教育科学文化機関(UNESCO=ユネスコ、本部パリ) から脱退すると発表し、ユネスコ側にも通告しました。

ユネスコは、教育や科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉の促進を目的とした国連の専門機関です。世界遺産の登録機関としても知られています。アメリカは2026年12月末に正式に脱退となる見通しです。

アメリカは脱退の理由について、「ユネスコがパレスチナを加盟国として承認していることはアメリカの政策に反しており、 ユネスコ組織内での反イスラエル的なレトリックの拡散につながった」と説明しています。ユネスコに対するアメリカの不満が大きくあるといえます。

これに対してユネスコのオードレ・アズレ事務局長は、トランプ大統領が再びアメリカをユネスコから脱退させる決定をしたことを深く遺憾に思っている」との声明を発表しました。 一方で「残念なことに、この発表は予想されていたものであり、ユネスコはそれに備えている」とも言及しています。

繰り返すユネスコ脱退と再加盟の歴史

歴史をふりかえるとアメリカはユネスコからの脱退と再加盟を繰り返しています。一度目はレーガン政権時の1984年に、ユネスコが左翼的で放漫財政体質に陥っているとして脱退し、その後2003年に再加盟したのに続き、 第一次トランプ政権時代の2018年にも脱退しています。

バイデン前大統領時代の2023年に再加盟していますが、今回で3回目の脱退となります。ユネスコの推進する政策がトランプ大統領の進めるアメリカ第一主義と相容れない部分があるのと判断からです。

トランプ大統領は、みずからの考え方に合わない国際機関や国際的な枠組みから抜け出そうとする傾向が強く見られます。

地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」についても、トランプ氏が大統領一期目の2018年に、アメリカが温暖化対策で巨額の支出を迫られる一方で、製造業部門で多くの雇用が失われ、経済に与える影響が大きいとして脱退し、その後のバイデン政権時代に再加盟しています。しかし2024年にトランプ氏が2期目の大統領に就任すると、その直後に離脱するための大統領令に署名しています。

こうしたアメリカ第一主義を優先する姿勢は、これまで長い時間をかけて築いてきた国際機関や国際的枠組みについてその役割や関係者の努力をないがしろにするものであり、結果としてアメリカが孤立する方向に追いやることになります。

トランプ大統領の任期中にはこうした動きが今後も続くことが見込まれますが、日本を含む他の世界各国はあらゆる方法やチャネルを通じてアメリカを説得し、独善的な姿勢を是正に向かわせる努力が必要になるでしょう。

在京の大手メディアで取材記者歴30年。海外駐在も経験。

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