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【ダブルワークの税務と注意点】税理士に聞く複数の給与所得がある場合の確定申告

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【ダブルワークの税務と注意点】税理士に聞く複数の給与所得がある場合の確定申告

副業の一形態であるダブルワークが注目を集めています。しかし、複数の給与所得がある場合、税務や社会保険の取り扱いに注意が必要です。本記事では、税理士の渡邊亮氏に、ダブルワークの定義から確定申告の方法、所得合算の手順、住民税や社会保険料への影響まで、詳しく解説していただきました。ダブルワークを行う上での注意点もまとめています。柔軟な働き方を選択する際の参考にしてください。

ダブルワークとは企業との雇用関係がある副業

――まず、ダブルワークの定義と特徴について教えていただけますか。

渡邊:ダブルワークは、同時に2つ以上の仕事を持ち、それぞれの仕事を並行して行う働き方です。通常、本業に加えて副業として企業と雇用関係を結んで働くケースを指すことが多いです。つまり、本業の給与所得に加えて、副業でも給与所得がある状態を一般的にダブルワークと呼びます。ただし、法律上の明確な定義はありません。

ダブルワークの特徴としては、雇用関係があるため、労働時間や社会保険の取り扱いに注意が必要です。例えば、法定労働時間を超えて働く可能性があるため、割増賃金の問題が生じる場合があります。また、副業先での労働時間によっては、社会保険の加入が必要になることもあります。

関連記事:副業の残業代は誰が払う?払われないケースもある?【弁護士に聞く労働問題】

本業の収入は年末調整、副業の収入は確定申告が必要

――複数の給与所得がある場合の確定申告について、詳しく教えていただけますか。

渡邊:複数の給与所得がある場合、原則として確定申告が必要になります。ただし、副業の給与収入が20万円以下で、かつ本業の給与について年末調整が行われている場合は、確定申告は不要です。

年末調整は本業の給与についてのみ行われるため、副業の収入については自分で確定申告する必要があります。つまり、本業と副業の収入を合算して、適切な税額を計算し納付することになります。

ここで注意が必要なのは、本業と副業の給与収入を合計した金額に対して累進課税が適用されるということです。そのため、単純に本業と副業の源泉徴収税額を足しただけでは、納税額が不足する可能性があります。

――本業と副業の所得合算方法について、具体的に教えていただけますか。

渡邊:本業と副業の所得合算は、以下のような手順で行います。まず、本業と副業それぞれの源泉徴収票を用意します。次に、両者の給与収入を合計します。

例えば、本業の年収が500万円、副業の年収が100万円の場合、合計で600万円となります。その後、給与所得控除を適用します。給与所得控除は収入金額に応じて決まっており、600万円の場合は164万円となります。つまり、給与所得は600万円から164万円を引いた 434万円となります。

この給与所得から基礎控除などの各種所得控除を引いた金額が課税所得となり、これに所得税率を掛けて税額を計算します。

ただし、すでに源泉徴収されている税金があるので、その分は差し引いて最終的な納付税額または還付税額を算出します。

関連記事:副業の確定申告を税理士が解説!手順・注意点・e-Tax活用法

住民税の2つの納付方法

――住民税の取り扱いについて、特別徴収と普通徴収の違いを教えていただけますか。

渡邊:住民税については、特別徴収と普通徴収という2つの納付方法があります。 特別徴収は、本業の会社が従業員の給与から住民税を天引きして、従業員に代わって自治体に納付する方法です。一方、普通徴収は、個人が直接自治体から送られてくる納付書で納める方法です。

ダブルワークの場合、基本的には本業の給与から特別徴収される形になります。確定申告で副業の所得を申告すると、翌年度の住民税額に反映されます。その際、本業の会社に通知が行き、給与からの天引き額が増えることになります。

――社会保険料への影響はどのようになりますか。

渡邊:基本的に、副業の収入は社会保険料に影響しません。社会保険料は、本業の給与に基づいて決定される標準報酬月額によって計算されます。 ただし、副業先での労働時間が一定以上(通常、週20時間以上)ある場合は、その企業での社会保険加入が必要になる可能性があります。

この場合、本業と副業の両方で社会保険料を支払うことになります。 なお、国民年金の第3号被保険者(専業主婦など)が副業を始める場合は、収入によっては第1号被保険者への切り替えが必要になる場合があります。

――副業の収入増加に伴う税金の変化について教えてください。

渡邊:副業の収入が増加すると、当然ながら税負担も増加します。日本の所得税は累進課税制度を採用しているため、所得が増えるほど適用される税率が高くなります。 例えば、本業の給与所得だけでは20%の税率が適用されていた人が、副業の収入によって合計所得が上がり、23%の税率が適用されるようになるといったケースがあります。

また、住民税も所得に応じて計算されるため、副業の収入増加に伴って翌年度の住民税額も増加します。 さらに、所得の増加に伴い、各種控除や社会保障制度の適用にも影響が出る可能性があります。例えば、配偶者控除や配偶者特別控除の適用条件が変わったり、児童手当の所得制限に該当したりする場合があります。

――ダブルワークを行う上で注意すべき点をまとめていただけますか

渡邊:ダブルワークを行う際は、以下の点に特に注意が必要です。 まず、本業の就業規則を確認し、副業が認められているかどうかを確認しましょう。多くの企業で副業が解禁されていますが、事前の申請や報告が必要な場合があります。

次に、労働時間管理です。過労にならないよう、本業と副業を合わせた労働時間に注意が必要です。また、副業先での労働時間によっては、社会保険の加入が必要になる場合があります。

税務面では、確定申告の必要性を認識し、適切に所得を申告することが重要です。特に、源泉徴収だけでは税額が不足する可能性があるため、納税資金の準備も必要です。

最後に、情報管理にも気をつけましょう。本業と副業の情報を混同したり、利益相反を起こしたりしないよう注意が必要です。

ダブルワークは柔軟な働き方のひとつですが、これらの点に注意しながら、適切に管理することが大切です。不安な点があれば、税理士や社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。

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