仕事が原因でうつ病に!労災認定を受けるには?【弁護士に聞く労働問題】
日々働いていると、職場でハラスメントやトラブル、不当な扱いなど、理不尽な問題に直面することは避けられないことかもしれません。そんなとき、自分一人で対処するのは難しいものです。専門家である弁護士に相談し、法律に基づいたアドバイスを受けることで、問題をスムーズに解決する手助けとなります。bizSPA!フレッシュでは、労働問題に関するよくある質問をピックアップして取り上げていきます。
今回は、「労災」について、アディーレ法律事務所の岩井直也弁護士に解説していただきました。
目次
Q1. 仕事が忙しすぎて全然会社を休めず、うつ病になりました。会社に労災を認めさせることはできますか?
労働災害を認定するのは企業ではなく、労働基準監督署という行政機関です。労働災害に該当する可能性のある事象が生じた場合は、労働基準監督署において必要な申請書類を提出し、監督署の調査を経て認定されるかどうかが決定します。
労災かどうかを調査するにあたっては、業務遂行性(その災害が業務中に起きたものであるかどうか)と業務起因性(その災害が、業務が原因となって起こったものか)という点が要件となります。
Q2. 労働基準監督署に提出する申請書類は、具体的にどのようなものが必要なのでしょうか?
労災の申請と一口に言っても、療養補償給付(治療費関係)・休業補償給付(労災により働けなくなったことによる賃金の補填)・障害補償給付(後遺症に対する給付)など、受けられる給付にはさまざまなものがあり、費目によって提出すべき書類は変わります。
基本的には、各費目の給付請求書に加え、診断書や治療費の領収書、給与明細書の写しなど、それぞれの費目に必要な添付書類を付して請求します。詳細な提出書類は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
Q3. 労災が認められたら、会社から休業手当は出ますか?
労働災害によって休業を余儀なくされた場合、労災保険に基づいて休業補償給付を受けることができます。休業手当は、会社の経営悪化や設備故障など、会社の都合によって労働者が休業した場合に、会社から支払われる手当ですが、休業補償給付は、労働者が労働災害により休業した場合に、労災保険に基づいて支給される給付金となります。
Q4. 休業手当と休業補償の両方を受け取ることもできるのですか?
労働基準法84条1項は、労災保険による補償給付がなされたとき、その限度で会社は補償の責任を免除される旨、規定しています。
労災保険による給付がなされたうえ、さらに休業手当として会社から給付を受けることができるとなると、労働者は賃金を二重取りすることができてしまうので、休業補償給付と休業手当を両方受け取ることはできないと考えられます。
Q5. 会社に勤務時間を人並み程度に調整してもらったり、休める部署に配置換えをしてもらうことはできますか?
法律上、企業には、職場における従業員に対する安全配慮義務というものが課せられています。これは、従業員が生命身体の安全を守られながら勤務できるように、企業が必要な配慮をしなければならないという義務です。
したがって、うつ病により長時間労働が困難な従業員に対しては、勤務時間を調整したり、心理的負担の軽い業務に従事させるなど合理的な措置を取らなければならない場合があり、この義務を怠ってうつ病が悪化するなど労働者が損害を被った場合は、慰謝料請求の対象となる場合もあります。
もっとも、安全配慮義務違反は抽象的なものですので、ここから直ちに労働者の希望通りに配置転換や勤務時間の調整をしなければならないという具体的な義務が生じるわけではありません。
とはいえ、会社としても後で安全配慮義務が不十分であったと指摘されるリスクを負いたくないことが多いので、確実に希望通りに調整してもらえるかどうかは会社次第ではありますが、上司や人事の方に状況を説明し、合理的な配慮をするよう掛け合ってみるのがよいでしょう。
[協力]
アディーレ法律事務所