【弁護士に聞く労働問題】有給休暇の買取は違法!例外的に認められるケースは?
日々働いていると、職場でハラスメントやトラブル、不当な扱いなど、理不尽な問題に直面することは避けられないことかもしれません。そんなとき、自分一人で対処するのは難しいものです。専門家である弁護士に相談し、法律に基づいたアドバイスを受けることで、問題をスムーズに解決する手助けとなります。bizSPA!フレッシュでは、労働問題に関するよくある質問をピックアップして取り上げていきます。
今回は、「有給休暇」について、アディーレ法律事務所の岩井直也弁護士に解説していただきました。
目次
Q1. 仕事が忙しすぎて有給休暇が取れません。上司から有休を取れと言われるので、形だけ有休を取っているものの、実際には働いています。その場合、違法にならないのですか?
A. 有給休暇とは、賃金が支給される休暇のことであり、休暇とは労働の義務が免除される日のことを言います。したがって、形式的には有給休暇と扱われているが、実際には労働せざるを得なかった場合、当該日は労働の義務が免除されていないことから実質的には有給休暇を与えたとはいえないと評価されるでしょう。
この場合、企業においては当該日の有給休暇を別日に振り替えるなどの対応を取ることが望ましいと言えます。現在、企業には、有給休暇が10日以上付与される労働者に対しては、毎年5日間、時季を指定して有給休暇を取得させる義務が課せられており、この義務に違反した場合には、30万円以下の罰金を科せられる場合があります。
Q2. 有休には期限があり、消滅すると聞いたのですが、それはいつでしょうか?
A. 有給休暇は、その有給休暇が付与された日から2年間が経過すると、時効により消滅します。有給休暇は、半年以上勤務すると、以降1年毎に所定の日数が法律上付与されていきます。有給を取得することで、働かずにその日分の賃金を得ることができるので、時効にかけることのないよう、計画的に取得していくとよいでしょう。
Q3. 休もうとしても実際には休めないので、有休を会社に買い取ってもらうことはできませんか?
A. 有給休暇の買取は原則として違法となるため、会社が買い取ることはできません。有給休暇とは、労働者に十分な休息の機会を与えるという点に重要な意味がある制度であるため、有給を買い取ることで休息の機会を失わせることは、有給休暇の趣旨を損なうことになることから認められていないのです。
ただし、例外的に有給休暇の趣旨を損なわない場合には買取が認められるケースがあります。例えば、まもなく退職を予定しているが、退職日までに有給休暇を消化しきれない場合や時効によって消滅してしまう有給休暇であれば、買取を認めても労働者の不利益になることはないため、企業が応じれば買取が認められるとされています。
[協力]
アディーレ法律事務所