近年、副業に対する注目が集まっています。主たる職業以外で収入を得ることは、経済的な安定性の向上だけでなく、新たな能力の開発や人的ネットワークの拡充にも寄与します。しかし、副業を開始する前に理解しておいたほうがよいことがあります。

本記事では、副業についての基礎知識と、始め方に関する具体的な手順などを紹介します。

副業に関する法律と規制

副業は法律で禁止されているわけではありません。日本国憲法第22条では、職業選択の自由が保障されています。しかし、各企業の就業規則などによって、一定の制限が設けられている場合があります。

労働基準法における副業の扱い

労働基準法では、副業に関する明確な規定はありませんが、労働時間に関する規定が重要になります。労働基準法第38条では、複数の事業場で働く場合、労働時間を通算することが定められています。つまり、本業と副業の合計労働時間が法定労働時間（1日8時間、週40時間）を超えないようにする必要があります。

企業の就業規則

就業規則で副業を禁止または制限している企業もあります。しかし、2018年1月に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表し、モデル就業規則から副業禁止規定を削除しました。これにより、副業を認める企業が増加傾向にあります。
企業側が副業を認めるようになってきたのは、従業員が副業で得たスキルや経験などを生かして事業に貢献してほしいという狙いがあるからです。

副業が許可されている場合が多い職種や業界

Photo : Shutterstock.com

副業が比較的容易な職種や業界には以下のようなものがあります。

1. IT・プログラミング関連
2. ライティング・編集
3. デザイン・クリエイティブ
4. コンサルティング
5. 教育・講師
6. 翻訳・通訳
7. 営業・マーケティング

これらの職種は、時間や場所の制約が比較的少なく、スキルベースで仕事を受注できるため、副業として人気があります。

副業を始めるための具体的なステップ

副業を始めるためには、どんな準備が必要なのでしょうか。以下で詳しく解説します。

自己分析と目標設定
まず、自分のスキル、興味、時間的余裕を客観的に評価しましょう。副業の目的（収入増加、スキル向上など）を明確にし、具体的な目標を設定します。

アイデアの創出と市場調査
自分のスキルや興味に基づいて副業のアイデアを考え、それぞれの需要を調査します。競合他社の分析も行い、自分の強みを生かせる分野を見つけましょう。

計画立案
副業にかける時間、必要な初期投資、収益目標などを含む具体的な計画を立てます。本業との両立を考慮し、無理のないスケジュールを組みましょう。

法的手続きの確認
副業に関する法律や規制、税金の扱いについて調べ、必要な手続きを行います。本業の就業規則も確認し、副業が許可されているかを確認しましょう。

環境整備
副業に必要な道具や作業スペースを準備します。効率的に作業できる環境を整えることで、生産性が向上します。

小規模での開始
リスクを最小限に抑えるため、まずは小規模から始めます。徐々に規模を拡大していくことで、安定した副業に育てていきましょう。

定期的な見直しと改善
副業の進捗状況を定期的に評価し、状況に応じて計画の見直しを行います。顧客の意見や反応を積極的に取り入れ、サービスや製品の品質改善に継続的に取り組むことが重要です。また、必要に応じて自己研鑽に励みましょう。ウェブ上の学習プログラムや専門書などを活用して、専門知識や技能の向上に努めることをお勧めします。

これらのステップを着実に実行することで、副業を成功に導く基盤を築くことができます。

副業を始める時の注意点とリスク管理

Photo : Shutterstock.com

副業を始める際は、以下の点に注意しましょう。

健康管理

本業と副業の合計労働時間を把握し、過労を避けましょう。また睡眠時間を含む適切な休息時間を確保することが重要です。週に最低1日の休日を設けるなど、計画的な休養を心がけましょう。

ストレス管理も重要です。本業と副業の両立によるストレスを軽減するため、定期的な運動やリラックス法を取り入れましょう。

過労や健康悪化の兆候を早期に発見するため、定期的な健康診断や自己チェックを行いましょう。

情報管理

情報管理を徹底するためには、まず本業と副業で使用するデバイスや書類を完全に分離し、情報の混同を防ぐことが重要です。また、本業の機密情報を副業で使用したり、漏洩したりしないよう、厳重な管理が必要となります。

情報を保存する際は、安全性の高いクラウドサービスを利用し、アクセス権限を適切に設定することで、情報の安全性を高めることができます。

定期的に情報の棚卸しを行い、不要な情報は適切に廃棄し、必要な情報のみを保持するよう心がけることで、情報管理のリスクを最小限に抑えることができるでしょう。

コンプライアンス

コンプライアンスを徹底するためには、副業に関する法律を十分に理解し、遵守することが重要です。また、本業の会社の副業に関するポリシーを確認し、必要な手続きを適切に行うことも欠かせません。

本業と副業の間で利益相反が生じないよう、業務内容を慎重に選択する必要があります。副業先での行動が本業の会社の評判に影響を与える可能性を常に意識し、高い倫理観を持って行動することが求められます。これらの点に注意を払うことで、適切かつ責任ある形で副業に取り組むことができるでしょう。

適正や興味に合った副業で、充実したキャリア構築を

副業は、経済的な利益だけでなく、個人の成長や社会とのつながりを広げる機会にもなります。法律や規則を遵守し、リスクを適切に管理することが成功の鍵となります。この記事で紹介した基本知識とステップを参考に、自分の適性や興味に合った副業を見つけ、充実したキャリアを築いていってください。