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スタバ撤退後にスターズコーヒー誕生「コピー大国」と化すロシアに経済制裁が効かない理由

ロシアの大統領選が数日後に控えている。プーチンの再選が確実視されているが、世界の人々に悪く思われている(はずの)プーチンがどうして選挙に勝てるのか。

さらに、世界からあれだけ制裁を受けている(ように見える)ロシアが、どうして何年も戦争を平然と続けていられるのか。日本の次世代のリーダーたちにとっても大事な問いのはずだ。

そこで今回は、国際安全保障、国際テロリズム、経済安全保障などを専門とする和田大樹さんに、当たり前のように戦争を継続するロシアでプーチンが支持される現状を教えてもらった(以下、和田大樹さんの寄稿)

ロシアと欧米、日本の関係は冷戦後最悪レベル

先月の2月で、ロシアによるウクライナ侵攻から2年となった。今日の戦況はロシア有利に大きく傾いている。

ロシア軍は、ウクライナ東部での戦いでも最近、重要な拠点を掌握(しょうあく)した。

ウクライナ軍も「ロシア軍をウクライナ国境から追いやる」から「ロシア軍の占領地域をこれ以上拡大させない」という守りの姿勢になりつつある。それだけ、ウクライナは劣勢に立たされているのだ。

しかも、今年11月の米大統領選ではトランプ勝利のシナリオも現実を帯び始めた。トランプ氏は「24時間以内にウクライナ戦争を終わらせる」「ウクライナへの支援を停止する」と豪語している。トランプ再選は、ウクライナにとって悪夢のシナリオと言える状況だ。

しかし、ウクライナをここまで追いつめた張本人はプーチンである。トランプではない。ロシアの侵攻は疑いなく国際法違反である。

ロシアと欧米、日本などとの関係は冷戦後、最悪なレベルにまで冷え込んでいる。その証拠に、日本から欧州へ向かう飛行機はロシア上空を飛べない。中央アジアや中東の方を迂回(うかい)させられ、12時間から16時間・17時間と所要時間も増加したままだ。

「悪者」プーチンもロシア国民の間で人気が高い

 

以上のような現実を目の当たりにするわれわれ日本人からすると、プーチンのイメージはかなり悪いと思う。

日常生活で食べる・使うあらゆる品々の物価が高騰しているが、その原因の1つはプーチンである。プーチンは、われわれの日常生活にも被害を与えているのだ。

だが、ロシア国内でのプーチンの支持率は意外にも高い。昨年11月時点のプーチン大統領の支持率は85%だった。ウクライナ侵攻後おおむね8割台の支持率をキープしている。

大統領選が3月には行われる予定だが再選は確実視されており、8割以上の得票をプーチンは目指している。

この数字や集計結果に疑問を持つ人も居るかも知れない。最近も、反プーチンを掲げる政治家の大統領選挙への立候補登録が拒否されるなど、ロシアの集計結果には実際に、多くの疑問が残る。

しかし、ロシア国民の間でプーチンの人気が高いという事実もまた否定できないのだ。

世界193カ国中、対ロ制裁を始めた国は40カ国あまり

ウクライナ侵攻以降、欧米や日本などは、ロシアへの経済制裁を一斉に強化した。しかし実は、世界193カ国中、対ロ制裁を始めた国は40カ国あまりに留まっている。

中国やインドなど多くの国々はロシアとの経済関係を維持、むしろ強化している。欧米による制裁はそれほど効いていない。制裁の影響が大きくならないよう、中国などとの経済関係で補完しているからだ。

ロシア国内からは確かに、マクドナルドやスターバックスなどが撤退した。ロシア市民に影響が出ているようにも感じられる。

しかし、米コーヒーチェーン大手スターバックス社撤退後には〈スターズコーヒー〉をつくり、米飲料大手コカコーラ社の清涼飲料水を〈クールコーラ(コカコーラの模造品)〉〈ファンシー(ファンタの模造品)〉などと名前を変え、コピー商品を生んで対応している。コピー経済という状況では中国とそっくりだ。

要は、ウクライナ侵攻があっても経済的・社会的に市民への影響はそれほど出ていない。その上、支持率低下を回避する策をあらゆる形でプーチンが講じているので、支持率が劇的に低下する要因が見当たらないのだ。

反プーチンの活動家が死亡も反プーチンが盛り上がらない理由

無論、プーチンを支持しない国民も居る。本音を言えず、プーチンを支持していると口で言うだけの国民も少なくない。

3年前、ロシアの独立系世論調査機関レバダセンターが公表した独自の世論調査結果によるとプーチン政権の支持率は51%にとどまり、支持しないが46%になったという。

ウクライナ戦争に動員される兵隊の中には若者も少なくないため、若者から反発を招いている部分は間違いなくある。

最近も、反プーチンを掲げる活動家が刑務所で死亡する出来事があった。そうした状況が、若者たちの不信感をさらに高める要因となっているとも言えよう。欧米や日本など諸外国との関係悪化を懸念する国民も居る。

しかし、繰り返すが、経済制裁が根本的に効いていない中では、支持率が劇的に低下する要因が見当たらない。

プーチンとしても、国内から反対の声が広がらないよう、できる対策は全てやっている。結果、日本人からは信じがたい状況かもしれないが今回の選挙でも再選が確実視され、権威主義の体制が温存されると考えられるのだ。

[文/和田大樹]

専門分野は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者として安全保障的な視点からの研究・教育に従事するかたわら、実務家として、海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。特に、国際テロリズム論を専門にし、アルカイダやイスラム国などのイスラム過激派、白人至上主義者などのテロ研究を行う。テロ研究ではこれまでに内閣情報調査室、防衛省、警察庁などで助言や講演などを行う。所属学会に国際安全保障学会、日本防衛学会、防衛法学会など。多くのメディアで解説、出演、執筆を行う。
詳しい研究プロフィールは以下、https://researchmap.jp/daiju0415

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