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前田旺志郎、先輩俳優からの助言で開眼。色のなかったセリフにもグラデーションが付いた!

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幼少期より芸能活動を開始し、お兄さん(前田航基)とのお笑いコンビ「まえだまえだ」でも知られてきた前田旺志郎さん(22)にインタビュー。

近年は俳優として、さまざまな作品で印象を残し、今年公開されてヒットを記録した映画『わたしの幸せな結婚』での好演も記憶に新しいところです。

大作、インディーズ問わず多くの作品に出演を重ねている前田さん。29日からは、テーマ「20」、尺20分、予算20万円という“20”縛りで行われたシナリオコンペの受賞作で構成されたオムニバス映画「20祭」の一篇である主演作『二十才の夜』が公開です。

そんな前田さんに、この3月に卒業した大学生活のことや、先輩俳優の言葉をきっかけに、最近変わったという芝居への向き合い方などを聞きました。また今後、演技で賞をもらった際に、壇上でコメントする様を家で想像して練習しているとの可愛らしい一面も。

この年齢ならではの環境の変化やギャップを描く

――『二十才の夜』は、大人とも子どもともつかない年齢の主人公の、繊細な心のもがきを描いた素敵な作品です。

前田旺志郎(以下、前田):二十才の主人公の、周りとの絶妙な関係性の変化といいますか。高校時代まではすごく仲の良かった友達がいて、そこからそれぞれに卒業して環境が変わってしまって、今まで通りではいられなくなって、同じようにしていても微妙にズレがあったりする。この年齢ならではの環境の変化やギャップみたいなものが、すごく繊細に描かれたストーリーだなと思いました。


大人っぽいよねと言われるけれど

――二十才というと、前田さんは2年前のことですが、この2年は大きいですか?

前田:二十才に成りたてのころって、大人への憧れみたいなものが、今に比べてすごく強かった気がします。実際に二十才になってみると、別に二十才になったからといって、前田旺志郎が別の何かになるわけじゃないなと。

――同じ二十才でも、前田さんの場合は、子どものころからお仕事をされているので、周りの二十才より考え方が大人っぽかったりしそうです。

前田:年上の俳優さんとか、大学の先輩にも、「旺志郎って大人っぽいよね」と言われることがあるんです。いやではないですけど、自分ではあまり納得がいってないというか、『めちゃくちゃ子どもだけどな』と思ってます(苦笑)。

オンライン授業は“どこでもドア”

――主人公は二十才ですが、大学受験を続けている役柄でした。前田さんは、俳優業と並行してずっと大学も?

前田:今年の3月に卒業しました。

――おめでとうございます! たくさんの作品に出演されながら、すごいですね。

前田:ちょうどコロナ禍の時期に重なったので、家でレポートを書いたり、オンラインで授業を受けたりといったことができたんです。それこそ現場で1シーン撮って、2時限受けてみたいなことができたので、どこにいても大学の授業を受けることができました。“どこでもドア”を手に入れたみたいな。

――なるほど。ステキな捉え方ですね。大学での期間は一番何を学べたと思いますか?

前田:一番大きいのは人間関係だと思います。僕のゼミは、いろんなことをやっている人がいたんです。起業していたり、ボランティアとか、投資とか、IT関連とか、とにかくいろんなことをやってたんですけど、悩みがあるときにはみんなで話し合って考えましょうってことをやっていて、そういう話し合いを突き詰めてやれる場を経験できたのは大きかったと思います。

実はある程度書いた脚本が

――前田さんは小さな頃からお仕事されてきて、インディーズ系から大作までたくさんの作品に出られてきました。ご自身で映画を撮りたい、作りたいといった気持ちはないのでしょうか?

前田:興味はずっとあります。実際、大学2年になるくらいのときに企画したんです。でもコロナ禍になっちゃって。過ぎたらやろうと思って脚本もある程度まで書いていたんですけど、思った以上にコロナ禍が長引いてしまって、モチベーションが持ちませんでした。

――前田さんも『MIRRORLIAR FILMS』シリーズに出られましたが、今は俳優さんが短編映画を撮る企画も増えています。もし声がかかったら?

前田:そんなお話がいただけるのなら、撮ってみたいですけど、でもまだちょっと怖いかなという気持ちもあります。でも挑戦できる場があるのなら、やってみたいです。

人としてどうあるべきか

――多くの方と出会われてきたと思いますが、いまも心に留めている、影響を受けた言葉があれば教えてください。

前田:お仕事の場ではないのですが、中学の顧問の先生に言われていたことです。僕はバスケ部だったんですけど、「トイレのスリッパがぐちゃぐちゃになっていたら、お前たちが直しなさい。洗面台が濡れていたらお前たちが拭きなさい。会場のゴミも、お前たちが全部捨ててから帰りなさい」とずっと言われてたんです。「いくらバスケが上手くても、人間として素敵でなければ、いいプレイヤーではない」と。つまり、まず人としてどうあるべきか。その言葉は、役者になった今でも意識しています。

大東駿介に言われた言葉でバシーン!と来た

――では、役者として、変化したと感じていることはありますか?

前田:影響を受けた言葉の延長にもなるのですが、このところ、お調子者みたいな役をいただくことが多かったんです。あまりに続いたので、「またこういう役か」みたいに思ってしまった時期がありました。それを大東駿介さんに、「ちょっと悩んでるんです」とお話したときがあって。そしたら「お前、偉そうだぞ」と。「その役にはその役の人生があって、フレームは似ているかもしれないけど、同じ役ではない。今、お前はどこかで『とりあえずストライクゾーンに投げておけば打たれへん』と思ってるんちゃう? ストライクゾーンだって、あの中のどこに投げるか、どの球種で投げるか、速度で投げるか、色々やってたら全然違う球になるんじゃないの?」と言われたんです。

――おお、それは響きますね。

前田:そうなんです。自分自身、もちろん天狗になってたわけじゃないですけど、バシーン!と来て。それを言ってもらってから、向き合い方がすごく変わりました。脚本の読み方も見え方も変わりましたし、色のなかったセリフにすっごいグラデーションのある色がついたような。大東さん、めちゃくちゃ尊敬してて大好きです。

日本アカデミー賞受賞を夢見て

――まだ20代に入ったばかりですが、20代で成し遂げたい野望を教えてください。

前田:日本アカデミー賞の新人賞とか、20代のうちに賞を取りたいです。あの場所に立ってコメントしたいです。僕、めっちゃその状況を想像して、家のシャワーヘッドに向かって受賞した時のコメントとか練習してるんです。目の前に丸テーブルが並んでて、みんながこっちを向いていて、「まさか、僕が」とか言って(笑)。

――あはは。いいですね。前田さんなら、実現できる目標ですね。これからも期待しています。最後に改めて、『二十才の夜』公開へメッセージをお願いします。

前田:二十才ならではの、いろんなことにもがく空気感があって、どのシーンも全部ステキな作品です。あの頃の感情の動き方や瞬間のかけがえのなさ、輝きの良さって、当時よりも過ぎた今になってちょっとわかる、といったところを、大人の方たちに感じてもらえるような作品になったんじゃないかなと思います。

<取材・文/望月ふみ ヘアメイク/佐藤健行(HAPP’S) スタイリスト/小宮山芽以>

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「20祭」
短編映画シナリオコンペ受賞作4本を、受賞者たち自らの手で映像化した4編からなるオムニバス作品。7月29日から8月4日に東京の池袋シネマ・ロサにてレイトショー上映。7/29(土)池袋シネマ・ロサ 20:30~ 前田旺志郎、トークショー登壇予定

(c)2023『20祭』事務局
https://kiryu202020.com/

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ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異
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