ロックダウン中の暇つぶしが本気のビジネスに。ネス湖畔の極小クラフトジン蒸留所
6か月でジョークを現実のものに
ビジネスとして本格的に蒸留酒づくりを始めるには、キャンベル氏の容量2リットルのスチルでは当然のことながら力不足。そこで、中国のメーカーからカスタム製造で容量200リッターのスチルを購入して設置し、それをキャンベル氏の母君にちなんで「ジャクリーン(Jaqueline)」と名付けた。
歳入関税庁などのお役所相手に頭を抱えることが何度もあったというが、6か月という驚くべき短期間のうちにコロナ渦中のジョークを現実のものにした2人のゆるぎない決意と実行力には脱帽である。
バッチNo1 の「洗礼」
ピッカピカのスチル「ジャクリーン」で蒸留を開始したのは2021年の6月。1バッチにつき700ミリリットルボトル400本。バッチNo1 の完成を記念して何か特別なことをしたいとあれこれ考えを巡らせているうち、おもしろいアイデアがひらめいた。
それは、ボトリングしたジンの最初の100本をネス湖に浸して「洗礼」するというもの。それだけではない。ネッシーが泳ぐ(?)水で洗礼を受けたボトルには、キャンベル氏とドワイヤー氏に加え、地元のネッシー研究の第一人者、エイドリアン・シャイン氏も署名し、鑑定書を添えて限定版のギフトボックスで販売することにした。
バッチNo1 の発売後数か月間は、スコットランド中の音楽フェスやスポーツイベント、クラフトフェアなどにスタンドを出し、メジャーな飲食業界見本市にも出展して自分たちのジンを売り込む行商人モードの生活だったそうだ。
「とにかく、出来るだけ多くの人たちに知ってもらわないといけなかったからね。試飲した人たちからの反応はとてもポジティブで、売れ行きも順調だった」とコメントするドワイヤー氏。
ラインアップの拡大
その後、ロンドンドライジンに加えて、地元産のラズベリーを使ったピンクジンもリリース。創業後はじめてのクリスマスシーズンには、キリスト生誕と東方の三賢人*にちなんで、フランキンセンスとミルラを使って金箔を入れたクリスマス限定版ジンを売り出した。これは大人気を博し、発売後数週間で完売したという。
*イエスが生まれたとき、東方から三人の賢人が現れ、乳香(フランキンセンス)、没薬(ミルラ)、黄金を捧げたといわれている