旧統一教会の“元信者”が明かす勧誘手法「長い時間かけて思考を変えさせる」
勧誘時には「役割分担」が決まっている
教団の場合も同じで、霊感、先祖の霊などを使い、多額のお金を集める成功方法を全国一律でシステム化していきました。
<旧統一教会では、実際に壺などを売る教団の霊能師・占い師(説得役)と、勧誘場所に連れていく人(連れ込み役)は別の人物が行うようになっています。役割分担をしっかりさせているのです。連れ込み役は、路上で相手との信頼関係を作るような話を中心にします。そしてそこでかわされた会話から悩みなどの情報を探ります。そこである程度、心を通わせたところで「何か、困ったことはありませんか?」などの問いかけをするわけです>(『信じる者は、ダマされる。元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』より)
こうしてターゲットにした相手から得られた情報をもとに、勧誘場所(ビデオセンター)に誘い入れます。
<連れ込み役は、「(ビデオセンター)の席に空きがあるかどうか聞いてみますね」と、勧誘先にいる指示役(タワー長などと呼ばれる)のもとに電話をかけて状況を伝えます。そしてこの人物(指示役)がどの占い師役(説得役)を任ずるのがベストなのかを考えます。この占い師役は、信仰歴が長く、より多くの人をだまして入会させた経験が豊富な人で、いわばプロフェッショナルです。この人物(説得役)は、連れ込み役から伝えられた個人情報をもとに、入会の説得にあたります>(『信じる者は、ダマされる。元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』より)
長い時間をかけて思考を変えさせていく…
こうして事前に、相手のすべての個人情報を知ったうえで、占いをビタビタとあてて、先祖や悪霊による「恐怖」を煽り、そこから救われる方法として、霊感グッズを販売するわけです。この「恐怖」と「救い」をセットにして使う手口は、信者教化にも同じように使われています。
ビデオセンターでは壺を売るのではなく、「教義を学ぶ」という形に変えているに過ぎません。しかし、こちらのほうがより悪質といえます。数か月という長い時間をかけて、相手の心に教義を植え込み、思考を変えさせていくからです。その結果、マインドコントロールされた人は容易にその心から脱することができずに苦しむことになります。
この手法は1980年代から20年以上の長きにわたって行われて、多くの信者が伝道されていきました。その結果、信者になった人たちが、「信者教化システム」のなかで勧誘者として活動し、別な人を誘いお金を詐取。ねずみ算式に教団の信者の数と金銭的被害が広がっていったのです。
<TEXT/悪徳商法評論家 多田文明>