芸人から小さなショップまで廃業の危機に!?インボイス制度の問題点
日本全体の生活を脅かしかねない
「消費税申告のための記帳や会計処理、申告書の計算など、規模の違いはあれど一般企業のルールと同じです。つまり、課税事業者になれば、日々の会計処理や消費税申告の負担も増えます。慣れない会計処理と税務に時間を取られ、本来力を入れたい事業活動や創作活動が疎かになりかねません。事務負担が重すぎて、開業や“生活の足し”のための仕事を諦めざるを得ない人も出てくるでしょう」
そもそも、働き方に関係なく、インボイス制度は日本全体の生活を脅かしかねないという。
「インボイス制度によって今以上に税負担が増加した場合、事業者としては最終的には値上げに踏み切るしかありません。ですが、コロナ禍や、長期間の実質賃金低迷等によって消費者の購買力が徐々に低下している今の日本で、またサラリーマンが自分の給与を自分で決められないのと同様に、立場の弱い下請けにとって、値上げは容易なことではありません」
値上げできない事業者が廃業を選ぶ一方で、生き残った事業者が契約金額の値上げに踏み切った場合は、回りまわって“商品の値上げ”として家計を圧迫することにもなるでしょう」
政府にとって制度導入は50年来の悲願?
「ちなみに、インボイス制度施行による消費税の増収を2480億円と国は試算しています。端的に言うと、この『税率変更によらない隠れ増税』分を、『下請け・元請・消費者の誰かが負担してね』というのがインボイス制度です。インボイス制度の導入によって、物価上昇がますます深刻化する可能性は十分考えられます」
自民党政権は“自由な働き方”を掲げ、フリーランスが働きやすい環境の整備を進めている。にもかかわらず、このような無慈悲な制度を進めているのか疑問である。これに平井氏は「政府にとってインボイス制度の導入は、フリーランスの労働環境整備よりも優先させなければならないほど重要な政策であるということでしょう」と考察する。
「実は、政府は1970年頃より、何度も消費税を導入しようとしては、国民の大反対にあい、失敗してきました。インボイス制度がなぜ突然話題に?と疑問に思う声も多くみかけますが、1980年代に中曽根内閣が、フランス等で導入されているインボイス方式による付加価値税の仕組みを『売上税』という名前で導入しようとして、世論の猛反発を受け、廃案になっています。
その後『売上(にかかる)税』という名前が反発を招いたとして、『消費税』という名称に変更、インボイス制度への猛反発からその方式も断念し、竹下内閣で今の消費税が導入されたという経緯があります。それから税率も大反発が出ない範囲で30年かけて少しずつ上昇させ、インボイス制度を今やっと導入しようとしている段階なのです」