トイレのハンドドライヤー利用再開はいつ?苦境のメーカーに聞く本音
商業施設や飲食店のトイレで見かけるハンドドライヤー。コロナの感染拡大に伴い、ほとんどの場所で長らく利用が停止されていたのはご存じのとおりだろう。しかし、2021年4月13日、経団連が「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を改定。
2020年5月に策定されてからはじめて「ハンドドライヤーの利用停止」の記述が削除された。これを受けて、各施設では利用再開する動きが広まっているが、まだまだ不安の声があるのもまた事実でもある。ハンドドライヤーの製造販売大手メーカーは、どのような認識なのだろうか。三菱電機の新事業推進グループマネージャー、毛塚裕一朗氏に話を聞いた。
利用停止になった経緯を振り返る
長引くコロナ禍によって、ハンドドライヤーが停止されていることが当たり前になったが、改めてそのいきさつを振り返ってみたい。毛塚氏は次のように話す。
「2020年5月、最初の緊急事態宣言が発令されている最中、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が行われ、感染症対策についての提言がなされました。なかでもトイレの感染リスクが比較的高いということに言及され、各業界団体もガイドラインを制定し、フタを閉めて水を流すことなどに並んで、ハンドドライヤーの停止も記載されました」
三菱電機では「ジェットタオル」という商品名でハンドドライヤーを製造販売しているが、このガイドラインの策定により、売り上げは大きく落ちたという。
「販売台数は、以前と比べて50%ほどになりました。そんな状況が2年以上に渡って続いていますね。2011年の東日本大震災の際にも、節電が呼びかけられたタイミングでハンドドライヤーを停止する動きはありました。しかし、あくまで一時的だったので、今回の打撃はかなり大きく感じられます」
制限したのは日本だけなのか?
今回、ハンドドライヤーの利用を規制する文言が削除された。国内では「感染リスクがある」という見方も根強いが、世界に目を向けると景色は変わってくるのだろうか。
「2020年に、ハンドドライヤーを規制するガイドラインが示された際、リスクが低いということを提言するために、海外の事情も調べました。例えば、欧米や東南アジア、オセアニアでは、規制するような動きはなく、それまでと同じように使われていました。
イギリスだと政府が、アメリカでは疾病予防管理センターが『問題ない』と発表しています。まして、WHO(世界保健機関)は、手洗いの後にペーパータオルやハンドドライヤーで手指を乾燥させることを推奨してさえいるので、規制しているのはもはや日本だけといってもよいです」
コロナの感染状況が、現在のような小康状態になったために規制を解除する動きをとったわけではなく、三菱電機は一貫してハンドドライヤーによる感染リスクは低いと訴え続けている。