「挨拶に戸惑う」若手社員の悩みが相次ぐ。強要だと感じてしまう背景は
いままで当たり前のようにおこなわれていた「挨拶」への意識が、若い世代を中心に大きく変化しつつある。疲れる、面倒、苦痛といったネガティブ意見を持つほか、「挨拶をするタイミングや適切な言葉がわからない」と悩んでいる若者も少なくないようだ。実際に編集部にも、そういった意見が届いている。
前半となるこの記事では、挨拶に戸惑う若者の意見を中心に紹介。公認心理師や精神保健福祉士の国家資格を持ち、メンタルケア・コンサルタントとして活躍、企業から依頼を受けてメンタルヘルスやコミュニケーションの研修をおこなう大美賀直子さんに話を聞いた(近日公開予定の後半では、挨拶に対して疲れる、面倒、苦痛といったネガティブ意見を持つ若者の意見にスポットを当てながら紹介)。
挨拶の適切な言葉がわからない
リモートワークや在宅勤務などフレキシブルな働き方が増えている。そういった働き方の変化により、「挨拶のとき、どのような言葉をかけるのが適切か」悩むケースもあるようだ。
「リモートワークも多く、会社内にいつから誰がいるのかわからない状態。『おはようございます』と言っていいのか、それとも『お疲れ様です』なのかわからない。入社した頃から、挨拶するタイミングを逃し、いつの間にか目が合った人にだけ会釈する感じ」(Aさん・20代・サイト制作関連)
「いまの会社に転職して間もない。いままでの会社は決まった時間にはじまり、定時で帰宅だったが、いまの職場は出社も退社もバラバラ。まわりが『お疲れ様です』と声をかけているので追随しているが、毎回同じ言葉でいいのか悩む」(Bさん・20代・管理職)
挨拶への不安「いちばん怖いのは無反応」
挨拶のタイミングや適切な言葉に悩む若者は少なくない。しかし、リモートやフレックスなどの場合も、「自ら挨拶するのがおすすめだ」と大美賀さんは言う。
「こちらから挨拶をしたとき、反応してくれるのか、応えてくれるのか。相手の表情は笑顔なのか、面倒くさそうなのか。いちばん怖いのは、無視や無反応。自分がエネルギーを投入しているのに、その報酬がないことに対して不安になったり、傷ついたりします。そのため、挨拶を積極的にやりたくない人が多いのが実情です。ただ、リモートワークから出社するようになったり、配置換えでお客様のところへ訪問するようになったりしたときには、必ずといっていいほど挨拶が必要になります」
自分から挨拶をしたいと考えている人は、「職場であれば、誰もが知っていて、どのタイミングでもおかしくない『お疲れ様』。外部の人には『お世話になっています』と、発声すること」に尽きると、大美賀さん。
「とにかく、口だけ動かす。これがいちばん簡単です。挨拶に肯定的な感情を持っていないのに笑顔を意識すると、感情と表情が矛盾し、挨拶のレベルを上げてしまいます。『レベル1』をクリアするために、『とにかく、声のみを出すこと』からはじめてみてください。企業研修では挨拶を奨励していますし、相手の話を聞く、反応をするといった内容も増えています。こういった依頼が増える背景には、挨拶習慣やリアルな現場でのコミュニケーションが減少傾向にあることも関係しているのかもしれません」