「父は私をラブホテルへ連れていった」複雑性PTSDに苦しむ女性の壮絶な“生い立ち”
親になってイチから自分を育て直したい
決死の覚悟で両親との関係を断ったというものの、状況が劇的に変わったわけではない。今でもフラッシュバックに苦しみ、悲しみや虚無感に潰されるような日々を送っているという。それでも「以前とは違う何か」を感じると井川さんは語る。
「今までは両親とうまく付き合うために、過去に蓋をしてきました。例えるなら、同じ道をひたすら何度もぐるぐると回っている感覚があったんです。でも今回、両親と絶縁したことで、やっとその道を抜けられたと感じています。これからは自分で自分の親代わりになって、自分で自分の手をとって、一歩一歩進んでいきたいです」
現行の制度には、井川さんのように虐待を生き延びた人たち「虐待サバイバー」をサポートする仕組みはほとんどない。もちろん、その他の精神疾患と同じように、障害者手帳や障害年金を申請することは可能だ。しかし、必要な書類を集める労力や経費が負担となり、申請前に諦める人も多いのが現状だという。
自助会やNPOの地道な活動が広まりつつはあるものの、全国的な数はまだ少ない。ならば、親を相手に裁判を起こそうにも、時効で叶わないというのが現実だ。自分では選びようのない物事や、努力することさえ叶わない実態が多くあるなか、「自己責任論」が幅を利かせる日本の現状が変わることを願いたい。
<取材・文/緑川アイラ>