「結婚→再婚」で姓が変わった26歳商社ウーマンの悩み。会社に報告しないといけないのか
「彼女、離婚したみたい」「もう、再婚するんでしょう?」「相手は、うちの社員よ」「誰?」「〇〇さん!」「えぇっ!?」。ある企業の社内で、こんな噂が広まっている。結婚2年で離婚し、再婚する女性社員がいる。この女性の現在の悩みは、社内で姓をどうするか。旧姓か、それとも前の夫の姓か、あるいは再婚相手の姓か……。
実際に起きた事例をもとに、社内での姓(名字)について考えたい。本記事の前半で具体的な事例を、後半で人事の専門家の解決策を掲載する。事例は筆者が取材し、特定できないように加工したものであることをあらかじめ断っておきたい。
結婚→再婚で職場の姓をどうするか?
最近、離婚した香田綾子さん(仮名・26歳)。香田さんが務めるのは、中堅の商社(正社員数400人)。新卒(大卒)で入り、今年4年目で、総務部配属。安定した仕事をすることで、部内では一定の評価を受ける。2年前に結婚した時からは、夫の姓・櫻井で勤務している。子どもはいない。
近く、再婚をする予定だ。相手は、現在勤務する商社の先輩社員・田村さんで、30歳の男性。社内では、結婚→再婚が静かな話題となる。実は、前の夫(櫻井さん)と結婚していた時に、田村さんと何らかの関係があったのではないか、とみる社員たちもいる。
香田さんの悩みは旧姓の「香田」に戻すか、あるいは「櫻井」のままにするか。それとも再婚相手の「田村」にするか否か。会社には旧姓使用制度があり、結婚後、人事部に届け出をすると旧姓のまま勤務ができる。結婚した女性社員の8割が旧姓を使う。香田さんは、結婚時に旧姓にはしなかった。
離婚後も姓を旧姓にしない場合もある
退職強要や解雇、パワハラ、セクハラなど労働問題や離婚問題に詳しい弁護士の和泉貴士さん(弁護士法人まちだ・さがみ総合法律事務所)に取材を試みた。和泉弁護士はまず、法律論を述べる。
「結婚したことで名字を改めた人が離婚をすると、法律上は婚姻前の名字(旧姓)に戻ることになるんです。離婚後も結婚時の名字を使う場合、『婚氏続称制度』を利用し、離婚の日から3か月以内に役所に『離婚のときに称していた氏を称する届』を提出すれば結婚していた時の名字を名乗ることはできます。
旧姓に戻すか、結婚時の姓を継続するかは、実際はそれぞれの方のお考えや家庭の事情により、対応がわかれます。私のもとへ離婚の相談に来る方の中には、離婚後も姓を旧姓にしない場合があるんです。例えば、小学生のお子さんがいる女性が離婚後の姓をどうするべきかと悩んでいました。
婚氏続称制度のことを知り、役所へ届けをしてお子さんが大学を卒業するまでは結婚していた時の姓のままでした。その後は家庭裁判所に申し立てを行い、旧姓に戻したんです」