消費税は必要なのか?「5%に減税」を野党が公約にする今、専門家に聞いた
政府の安定財源とされ、今では当たり前のように存在している「消費税」。しかし、最近では日本経済を停滞させた「戦犯」として消費税を挙げ、その廃止を訴える識者も増えている。また、衆議院選挙に向けて2021年9月に発表された野党4党の政策合意には、消費税減税が盛り込まれ、今回の衆院選でも複数の野党が「5%に減税」を公約に掲げている。
そもそも消費税とはなぜ存在し、一体何が問題なのだろうか。経済評論家で、株式会社クレディセゾン主席研究員の島倉原氏(@sima9ra)に話を聞いた。
消費税導入の背景をふりかえる
消費税が導入された背景に「法人税減税を目論んだ経団連が、政府に働きかけたため消費税が導入された」と言う人もいる。
ただ、島倉氏は「消費税が導入された1989年当時、私自身も高校生になったばかりでしたので、必ずしも当時の事情を詳しく知っているわけではありません」としつつも、「そのような単純な理由ではなく、複数の要因があったと考えるのが妥当だと思います」と話す。
「例えば、税務情報誌を定期発行している株式会社税務研究会のWebサイトでは、『現役世代を中心とした、所得税中心の税体系に対する不公平感』『当時の中心的な間接税であった、ぜいたく品課税の仕組みである物品税の形骸化』『高齢化社会に対応した、社会保障財源の確保』の3つが消費税導入の背景として挙げられています」
「高齢化社会への対応」を目的に導入された
「このうち、現在でも消費税増税の根拠として挙げられている社会保障財源の確保が問題視されるようになったさらなる背景として、1973年の高齢者医療無償化をきっかけに社会保障支出が膨張するようになったことが挙げられます。
高齢者医療無償化は、もともとは左派政党の後押しによって地方自治体レベルで1960年代以降、全国各地で導入されていましたが、それに伴う左派勢力の躍進に危機感を持った当時の田中角栄政権の下、国の制度として実施されるようになりました。
また、消費税導入以降の所得税減税が高額所得者を中心に行われていることや、消費税導入や引き上げと合わせて法人税減税が行われてきた歴史を踏まえると、1970年代以降のケインズ経済学衰退に伴う新自由主義・グローバリズムの台頭も、消費税を後押しした大きな背景のひとつと言えるかもしれません」