声優・畠中祐「コンプレックスだった」自分の声。一生かなわないと思った“大ベテラン声優”
自分の声がコンプレックスだった
――かつて、ご自身の声が嫌いで泣いたこともあると聞きました。
畠中:泣いていました。僕、アデノイドという扁桃腺が人より大きくて鼻が詰まっちゃう病気なんです。小学生のころは特にひどくて、鼻声が自分で気持ち悪くてコンプレックスでした。大人になって、少しずつよくなっていますが。
――手術は。
畠中:したかったんですけど、声が変わるかもしれないと言われて。そのときはもう『ナルニア国物語』をやらせてもらっていたので、シリーズものなのに、急に声が変わるのもヘンだと思ってしませんでした。
――その声が個性や武器になるんじゃないかとは?
畠中:そうですね。特徴的な声なんだろうなと思ったので、徐々にコンプレックスも取れていきました。でも使いづらい声だと思う瞬間もあるので、一長一短です。ただ、声が特徴的ではなくて、ストレートなお芝居をされる先輩に「せっかくそういう個性を持っているのだから、そこを磨いて頑張れよ」と言われたことはあります。
故・藤原啓治さんはすごかった
――特徴的な声を持っている先輩から何か言われることは?
畠中:言われないですね。第一線で戦い続けている方ばかりですし、そうした先輩方もまだ刀を研いでいる最中といった感じなので、敵に手の内は明かさない感じです(笑)。
――声優さんは、大ベテランでも「若手に負けないぞ!」という方が多い印象です。
畠中:見た目に縛られないので、若い役もできるし、みんながライバルなんですよね。一度、藤原啓治さん(『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし、『アイアンマン』のトニー・スタークなど)とご一緒したことがあったんです。
がっちりバトルシーンをやらせていただいたんですが、一生敵わないと思いました。アフレコが始まる前までは飄々とされているのですが、始まったらスイッチが入ってガラっと変わって、「負かしたるぜ!」みたいな感じで。僕のパンチは全部よけられて、逆にストレートパンチを喰らってました(笑)。