政府の“中小企業イジメ”が止まらない。日本企業の9割を襲う厳しい現実
生産性の低さは政府の怠慢である
最後に松尾氏は、日本の中小企業の技術は世界に誇れるレベルであり、不当に低く評価されているという。
「要するに、政府が適切な財政政策を講じないどころか、消費税増税や消極的な公共投資など、需要不足を招く政策ばかりを繰り返してきた当然の結果。むしろ日本の中小企業の技術は世界的に見て、非常にレベルが高いです。しかし、その高い技術は昨今、価格競争力ばかりに発揮されており、結果的に付加価値が低くなっている。
『より良いモノを生産する』ではなく、コスト削減のために企業努力のベクトルを向けている現状は残念でなりません。しかし、日本の中小企業の“節約力”は目を見張るものがあります。散々指摘されているような、『効率が悪い!』といったことは決してありません。町工場も中小零細企業もゾンビ企業などとレッテルを張られるいわれもなければ、外資ファンドの食い物にされて良いはずがないのです」
ポスト禍での新陳代謝や成長戦略といったお題目のもと、中小企業の再編が進められているが、果たして本当に国民の生活を救うものなのか。私たちも注意深く見なければならないだろう。
<取材・文/望月悠木>
【松尾 匡】
経済学博士。1964年石川県生まれ。神戸大学大学院経済学研究科博士課程後期課程修了。久留米大学経済学部教授を経て、2008年立命館大学経済学部教授。著書に『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店)、『「反緊縮!」宣言』『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』(ともに共著、亜紀書房)、『新しい左翼入門』(講談社現代新書)等がある