政府の“中小企業イジメ”が止まらない。日本企業の9割を襲う厳しい現実
自民党議員が「ゾンビ企業は市場から退場」発言
そもそもの疑問ではあるが、大前提としてなぜ政府は中小企業の淘汰を目論むのか。そこにはいくつかの要因が絡んでいるとのことだ。
「アトキンソンさんは“従業員数が少ない企業ほど生産性が低い”というデータを頻繁に用いて、生産性が低い中小企業のネガティブキャンペーンを続けています。そのため、M&A促進によって企業規模を大きくして生産性向上を狙っているのでしょう。
一方、政府も自民党の逢沢一郎議員が2020年5月に『ゾンビ企業は市場から退場です。新時代創造だね。』とツイートしていた通り、政府や銀行の支援を受けながら経営を続けている中小企業を疎ましい存在に思っています。さらには、外資ファンドのビジネス範囲を広げるために、M&Aの利便性を上げている可能性もあり、様々な思惑から中小企業淘汰が正当化され、推進されているのです」
そもそも“生産性”とは…
中小企業が淘汰される現状には危機感を覚えるが、一方で「生産性が低いなら潰してしまえ!」と賛同する意見もあるようだ。これについても松尾氏は「そもそも“生産性”とはなんですか?」と疑問を呈する。
「確かに生産性が低いと聞くと『経営者の怠慢』『無駄な業務が多い』と連想されがちですが、政府や御用学者が口にする“生産性”は、付加価値を従業員数で割った値を指しているのでしょうが、付加価値はモノやサービスの値段で決まります。
売れなければ安くなり、売上が上がらなければ付加価値は下がります。日本は長期間のデフレのために消費が冷え込んでおり、その背景を無視して企業の努力不足を指摘することは経済の根本を理解していない荒唐無稽な発想です」
今の状況(デフレ下)では生産性が下がるのは必然なのかもしれない。しかし、「中小企業は生産性が低い!」という主張は、論点のすり替えでしかないと松尾氏は主張する。