なぜ中年男性は教えたがるのか?ウザい“教え魔”にならない回避法
「教えてあげる」に潜む差別意識
とは言え、優越志向に関係なく、「教えてあげている」という善意から教え魔・クレーマーになる男性もいそうだがどうなのか。
「本人が善意を持って教え魔的、クレーマー的な言動を見せることもありますが、それらは『(女性・子供は男性よりも劣っているから)教えてあげる』という差別を含んだ一方的な善意“慈愛的ないし好意的差別”でしかありません。男性側が『親切心で教えてやったのに!』と訴えたところで、その背景には慈愛的ないし好意的差別が潜んでおり、“善意の押し付け”の可能性が高いです」
教え魔・クレーマーが話題になっているが、「迷惑な人もいるもんだな~」とネタ化するのは危険なのかもしれない。
「私は男性性、いわゆる“男らしさ”が脅かされ、男性が精神的に不安定になっている現象を“剥奪感の男性化”と名付けました。これまで『男の子はやんちゃなくらいが丁度いい』『浮気は男の甲斐性』といった具合に甘やかされたり、優先的に昇給・昇進できたりなど、男性というだけで下駄を履かされてきました。しかし、男女平等の意識が高まったことによって下駄が脱がされつつある現状に、ストレスを感じている男性は珍しくありません」
精神的に不安定な中高年男性
「教え魔・クレーマーに限らず、剥奪感の男性化がトラブルに発展するケースは増えているように感じます。2021年8月に小田急線の無差別刺傷事件が起きましたが、犯人は『6年ほど前から幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった』と供述しており、断定することは難しいですが、似た背景にあったのではないでしょうか。男性の歪んだ支配欲が事件の引き金になることは楽観視できるものではなく、男性性は早急に議論される必要があります」
これまで中高年男性をメインに話を聞いたが、若い男性も“剥奪感の男性化”を感じているのだろうか。伊藤氏は「若い男性はジェンダーステレオタイプを保有している傾向は低く、ゼロではありませんが、中高年男性と比較的すると少ないです」という。
「一時期、“草食系男子”が頻繁にメディアで特集されていましたが、この現象は若い男性が優越志向・所有志向・権力志向に囚われず、男女平等の適切な価値観を取り入れている兆候のように思います」