なぜ中年男性は教えたがるのか?ウザい“教え魔”にならない回避法
教え魔とクレーマーは何が違うのか?
そもそも教え魔とクレーマーを同一視して良いのだろうか。伊藤氏は「クレーマーは暴力性があり、犯罪に抵触する可能性があるため、教え魔と一緒くたにすることは早計ですが、彼らを生み出している背景には同じような傾向が潜んでいます」と語る。
「ちなみに、公共の場で上から目線の態度を他人に向ける男性は、日本に限った問題ではありません。数年前に支配的な言動を見せる男性を批判した『説教したがる男たち』という本がアメリカで大ヒットを記録しました。また、最近は男性が偉そうに女性を見下しながら、解説・助言する行為“マンスプレイニング”という言葉を耳にする機会が増えました。これは世界的に問題視されています」
改めて教え魔・クレーマーが生まれる背景を具体的に聞いてみた。
「幼少期から、男性は“男らしさ”、女性は“女らしさ”を押し付けられる過程で、男性は優越志向・所有志向・権力志向を持つことを善として育てられます。中でも、優越志向が強く、他者よりも優位な立場にいることに執着する男性は多いです。加えて、『男性は女性と子供を守る存在』という刷り込みを『男性>女性・子供・年下』と歪曲し、優越志向を満たすため、女性や子供をターゲットに教え魔・クレーマーになってしまのでしょう」
雇用の不安定化が「男らしさ」に影響も
昨今、“男らしさ”といった価値観は改められており、伊藤氏も「確かに男女平等の意識が高まり、以前のように男性が主導権を握ることに批判的な空気感が生まれました」とそういった現状を認めている。だが--。
「ただ、教え魔・クレーマーの加害者が中高年男性に目立っているように、現代の中高年男性は“男らしさ(男性性)”に憑りつかれているため、男女平等に対する価値観をアップデートできずにいます。また、ここ20~30年間、長引く不景気のために雇用が不安定化し、賃金も一向に上がらず男女間の収入格差も縮み、男らしさを誇示するための最大のアピールポイント“稼ぐ力”が低下しました。
時代の変化や立場の衰退など、以前よりも優越志向を満たすことが難しくなり、優越志向を満たす動きが激化したことが、今日の教え魔・クレーマー問題に通じているのではないでしょうか」