『愛の不時着』の会社はホラーも凄い!夏の終りに必見な韓国ホラー3選
夏といえばホラー。連日、新型コロナウイルスをめぐる耳をふさぎたくなるような恐ろしい現実が毎日報道されるなか、フィクションとしてのホラーに戦慄することは、心の健康を保つために案外有効な手段かもしれない。というような理屈は抜きとしても、韓国ホラーの面白さである。
国内外のドラマに詳しいライター・大山くまお(@oyamakumao)に、怖さはもちろん、豊かな映像世界を満喫できる韓国の傑作ホラー作品を3本厳選してもらった(以下、大山氏寄稿)。
ステイホームが常態化した今、Netflixをはじめとする配信サイトで海外ドラマを観るという楽しみは、すっかり定着した感がある。この夏も、旅行や帰省などを断念して、自宅で配信ドラマを楽しんでいた人も多いだろう。
なかでも高い人気を誇るのが韓国ドラマだ。「韓国ドラマといえばラブコメ、メロドラマが主流」という印象はすでに過去のもの。映画さながらの予算をかけた、没入度の高い、多種多様なドラマが世界に向けて発信されている。
今回は残暑が厳しいこの時期に楽しみたい、韓国ホラードラマを3本紹介したい。ただゾッとするだけでなく、ハードな残酷描写、凝りに凝ったストーリー、ユニークなキャラクター、ドラマとは思えない豊かな映像表現などを楽しんでもらいたい。
イッキ観必至!『Sweet Home-俺と世界の絶望-』
『愛の不時着』『ヴィンチェンツォ』などの大ヒット作品を送り出してきた「スタジオドラゴン」によるアクションサバイバルホラー作品が『Sweet Home-俺と世界の絶望-』。昨年12月に配信が開始され、世界10か国で1位を獲得した人気作だ。
主人公は古びた高層アパートに引っ越してきた高校生のヒョンス(ソン・ガン)。ひきこもりの上、交通事故で家族全員を亡くした彼が、アパートで奇怪な事件に遭遇する。隣人たちが怪物になって襲いかかってきたのだ。スピーディーに殺戮されていく住民たち。
外の世界はすでに怪物だらけの地獄のような状況になっていた(大統領が記者会見中に怪物化し、「国民の安全などクソ食らえ」と叫んで射殺されたりする)。ヒョンスは生き残った住民たちとともに籠城するのだが……という物語だ。
本作の何がすごいって予算がすごい。製作費は1話あたり約300億ウォン(約2億8000万円)! これだけでもNetflixとスタジオドラゴンの本気が伝わってくる。次々と登場する個性的なクリーチャーたちのCGは凝りまくっているし、人体を破壊する残酷描写も容赦がない。閉鎖空間の中で、人間と怪物たちによる血みどろのバトルが繰り広げられる。
登場人物も非常に個性的だ。複雑な過去を持つヒョンスは自殺願望が強い少年だったが、危機的状況の中で怪物と戦うことを選ぶ。武器はハンドメイドの電流槍。だが、彼には大きな特徴があった(それは観て確かめて!)。演じるソン・ガンは『恋するアプリ Love Alarm』(19年)でブレイク、感動作『ナビレラ ―それでも蝶は舞う―』(21年)でも主演した注目株。
残酷描写続出のサバイバルホラー
ほかにも優秀だが冷酷な兄とバレリーナの夢をケガで断念してひねくれてしまった妹、日本刀を操る眼鏡のサラリーマン風クリスチャン、有刺鉄線金属バットを振り回すバンド女子、素手でもめちゃくちゃ強いヤクザ、責任感の強い元消防官の女性、気のいい車椅子の発明家、最愛の赤ちゃんを交通事故で亡くしたお母さん、9歳と6歳の幼い姉弟、勇敢で戦士のような父親と娘、強欲で男尊女卑丸出しの嫌なジジイ、悪質な変態犯罪者などが、協力しあったり、争ったりしながら、生き残りをかけて怪物たちに立ち向かう。
怪物の設定もミソだ。本作を大きく分類すれば「ゾンビもの」になるのだろうが、登場する怪物たちは従来のゾンビのように血液や細菌などを介して感染するのではなく、人間の「欲望」によって怪物化していく。この設定が後半に効いてくる。
スピーディーな展開とハードな描写が続き、『バイオハザード』のようなホラーゲームをプレイする感覚で観られるが、次第にキャラクターたちに魅了され、やがて人間ドラマの渦に飲み込まれていく。全10話という長さもちょうどいい。一気観、間違いなしの傑作だ。
【Sweet Home-俺と世界の絶望-】
出演:ソン・ガン、イ・ジヌク、イ・シヨン
原作・制作:イ・ウンボク、ホン・ソリ、チャン・ヨンウ、キム・ヒョンミン、パク・ソヒョン、パク・ソジョン