渡辺大知が明かす、転機になった“バンドメンバーの言葉”「お前は役者をやったほうがいい」
“脈打つ感じ”が伝わる表現をしたい
――今、ご自分の肩書としては、どう呼ばれたいですか?
渡辺:肩書は気にしていないですね。ただ、出したい空気感については、ずっとこだわっていて。それは口では説明しにくいものですが、もしあえて言うならば、「匂い」「鼓動感」みたいなものがあって、それを表現したいんです。目には見えないけど、心臓の鼓動を感じるような、温度みたいなものを感じさせたい。それはいつも思ってます。
――なんでもデジタルでできる時代だからこそ、大切にしたいものはありますよね。
渡辺:人間が作るものの力を信じているところがあって、その脈打っているような感じ、鼓動感が伝わる仕事であれば、何でもいいんです。だからこそ肩書は気にしていなくて、その空気感が伝わるものを僕は追いたい。なので音楽や映像が自分に合っているような気がするんですよね。それで表現できると信じているので、挑戦を続けている感じがします。
――それは今度のドラマ『初情事まであと1時間』で実現されていますか?
渡辺:思うのは、演技はやっぱり人間にしかできないんですよね。人間そっくりのロボットが誕生して、セリフもプログラミングして、いい芝居をするロボットがいても、伝わり切らない何かがあると思うんです。今回のドラマで、オレはこの匂いが好き、空気感が好き、という思いが映っていて、伝わればいいなと思っています。
見返りを求めずにできる“好きなこと”を信じて
――バンドメンバーの言葉が転機になったように、渡辺さんの一言も、同じような境遇の人の何かのきっかけになるかもしれないですよね。
渡辺:僕と同じような悩みがある人は、絶対いると思うんです。ただひとつ、感謝を忘れないことですよね。誰かのために誰かが動くことで世の中は回っているところもあると思うんですけど、僕、以前、失敗してるんですよ、見返りを求めて。
――そういうイメージはまったくないので驚きです(笑)。
渡辺:「こんなにやっているのに!」って(笑)。よくないんですよね。何も産まないんですよ。見返りを求めず、何もバックがなくても、やるべきことはやったほうがいい。お金にならなくても、どうしてもやりたいことがあればやる。それくらい自分がやっていることを好きになるといいと思います。見返りを求めずとも「オレはこれが好きだ!」と人に言えるくらい、自分の好きなものを信じたほうがいいと思っています。
<取材・文/トキタタカシ>