マルチ集団の実態を描いた実体験漫画。被害者の心情は「推しに貢ぐ感覚」
街コンで女性に声をかけられ入会
――ネットワークビジネスの勧誘はどんな場おこなわれるのでしょうか?
勇者りっこ:街コンや合コン、または街中やバーでの声かけですね。そこから仕事悩みを聞いて情報を集め、先生に紹介して、セミナー参加……など、ある程度決まった流れがあります。詳しくは本編に描いてありますが、私も街コンで女性に声をかけられ、お手本のような手順で入会しました。
――勧誘のターゲットを決める基準はありますか?
勇者りっこ:大学や専門学校の新入生や新社会人、20代は誘われやすいなというのはあります。私が内部にいたときも「4月は勧誘がんばるぞ!」みたいな雰囲気でした。あと恋愛感情を持たれにくいように、声をかけるのはだいたい同性です。
ネットワークビジネスをやっている人は、身綺麗でハキハキしている人が少なくありません。おまけに親身に話を聞いてくれるので、変な話、モテる子が多いんですよね。実情は勧誘に使えるネタを探っているだけ、というめちゃくちゃ自分本位なひどい話なのですが(苦笑)。
多くの会員が「いいことをしてる」と思っている
――入会して勧誘する側になった時、りっこさんはどのようなことを考えながら活動していましたか?
勇者りっこ:怖いのが当時の私も含め、多くの会員が「いいことをしてる」と思っていることです。もちろん上位の会員は事情をよくわかっているのでしょうが。一応、M会では経営者の集団を目指すという目標があります。
毎月13万円という負荷を自分にかけることによって、経営力が上がる、成長できるみたいな思考回路です。だからそれを人にすすめるのは、善行だと信じこんでしまっていて。今考えると意味がわかりませんね……(苦笑)。途中で疑問を持ったこともあります。でも「違和感は成長の証」と教えられるので、脱出するのは難しかったです。
――りっこさんの所属していた「M会」内部の人間関係はどんな感じだったのでしょうか?
勇者りっこ:実は人間関係は良好でした。みんな優しくて基本的に肯定してくれます。私は仕事をかけ持ちしてでも13万円を納めていましたが、ほとんどそういった活動をしていない人もいましたね。
活動が少ないので一段下に見られますが、最低限ミーティングだけ参加していれば仲間はずれにもされません。だからこそやめられない会員も多かったです。M会からの勧誘がスタートしたころ、私は失恋や仕事の悩みを抱えていました。そして、かなり内部の人間関係に依存していました。
――最初はネットワークビジネスとは明かさず勧誘されていたのですか?
勇者りっこ:正式に入会する直前までブラックボックスでしたね。ネットワークビジネスとわかったときには、活動のために正社員から、時間の制約が少ない派遣社員に転職して、人間関係がほとんどM会内で完結するような状態でした。