「お辞儀ハンコ機能」は存在しない。シヤチハタ“360度回転OK”電子印鑑の真実
「行政手続きにおける認印の押印を全廃」が、旗振り役である河野太郎行政改革担当大臣のもと強力に推し進められている。しかし、この宣言があった2020年11月から8か月経過し、すでに“絵に描いた餅”状態になってしまっている。
Twitterで再び熱い議論が交わされた「お辞儀ハンコ」。複数の承認印が必要な場合、“部下が上司にお辞儀しているよう”に左斜めに傾けてハンコを押す行為を指す。都市伝説などと言われつつも、一部の業界では「常識」とされている。
そして、電子印鑑を展開するシヤチハタ株式会社の「かたむけて捺印する」が、お辞儀ハンコに特化した機能のように取り上げられることも。しかし、シヤチハタ広報の山口高正さんに取材したところ、まったく違う事実がみえてきた。
かたむけて捺印は「お辞儀はんこ」ではない
シヤチハタの電子決裁サービス「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」にある「かたむけて捺印する」という機能。やはり「お辞儀ハンコ」という習慣からなのか?
「いいえ、違います。弊社では、1995年から電子印鑑をリリースしていますが、2007年から360度押せるようにしました。お辞儀ハンコを意識して機能をリリースしたわけではありません。ハンコの押し方で意思を表すことがあるということで、360度回転でき、どういうふうにも押せるようにしています」(山口さん、以下同)
なるほど。いろいろな押し方があるということは、やはり「お辞儀ハンコ」も本当に実在するビジネスマナーなのだろうか?
「そのような押し方があるということは聞いたことがあります」
ハンコを逆さまに押す意味とは?
お辞儀ハンコは都市伝説ではなかった。さらに、それ以外にも「役職によりハンコのサイズが違う」などのルールもあるとか。
「ハンコを逆さまに押したりすることもあるそうですよ。たとえば、僕が申請をしたいとき、課長が不在で、先に部長に承諾をしていただいたとします。課長のハンコも必要になってきますが、後からハンコを押す課長は、部長が承認しているけど、自分は賛成していないときに、逆さまに押すことがあるそうです」
ええっ? ハンコを逆さまに押すことにどんな意味があるのだろうか?
「まぁ、そんなことが許されるか不思議ですが、ハンコの押し方によって意思が表されていることがあると聞いています」