東京五輪でホームレス“追い出し”も「生活苦の20代の相談が増えている」
孤立せずに「必要な支援を受けられる」地域社会を
清野さんは現在、TENOHASIの代表理事と事務局長を兼任している。コロナ禍で最も苦労しているのが、炊き出しのオペレーションだという。昨年3月にコロナの流行が本格化してから、炊き出しをすべて弁当の配布に切り替えた。炊き出しの利用者はもちろん、ボランティアスタッフの中でも集団感染が起きないよう、細心の注意を払っている。
「ここで集団感染が起きないことを最優先にしていますね。密にならないよう、1回の炊き出しに参加するボランティアスタッフの人数をかなり減らしました。炊き出しの利用者には、公園に2メートル間隔で割り箸を置いて、そこに並ぶようにしてもらっています」
TENOHASIのボランティアスタッフは60代、70代も多いため、現在、高齢者には参加を控えるように呼びかけている。また、清野さん自身も今年で60歳を迎える。コロナの感染リスクが高いと言われる年代であるが、それでも炊き出しや夜回りを欠かすことなく、生活困窮者やホームレスの支援に取り組み続けている。そこには、TENOHASIと清野さんが目指す社会への思いがあった。
報道をきっかけに支援や寄付は増えている
「もし生活に困っていたとしても、孤立せずに必要な支援を受けられる。そして、安心できる住まいがあって、困ったときに助けてくれる仲間がいる。我々はそういう社会をつくりたいです。夢物語かもしれませんけどね」
TENOHASIのこうした理念や活動に対する賛同者や支援者は、日に日に増えているという。
「最近は、支援や寄付をしてくださる方がとても増えています。特に昨年はたくさんのご支援をいただきました。きっと炊き出しについてメディアで報道される機会が増えたからでしょうね。同じ思いを持つ方が、少しでも増えれば嬉しいです」
困っている人がいれば、誰かが手を差し伸べる。つながり合ったその手が、生きづらい社会を渡るための“手の橋”となるように――。TENOHASIと清野さんは、そんな思いを胸に抱いている。
<取材・文・撮影/新妻 翔>