東京五輪でホームレス“追い出し”も「生活苦の20代の相談が増えている」
支援が難しいときは「シェルター」を提供
TENOHASIでは、既存の制度では支援が難しい生活困窮者やホームレス状態の人に対して「ハウジングファースト東京プロジェクト」という取り組みも行っている。
「ハウジングファーストでは、既存の支援では地域生活への定着が難しい人々に、直接入居できるアパートの個室を提供して、いつでも相談に乗れる体制をつくっています。我々は『シェルター』と呼んでいるのですが、そこで少し落ち着いて、元気になったら次のステップに踏み出してもらおうという考えです」
ハウジングファーストの取り組みは、シェルターを提供したら終わりではない。むしろシェルターを提供してからが始まりだ。役所への申請サポート、生活の相談、マイナンバーカードの取得、携帯電話の購入まで、入居者の生活をあらゆる角度から支援する。週に1度は必ず入居者を訪問して、アフターフォローを欠かさない。
「役所から『ご自分のアパートを探しましょう』と言われたら、不動産屋に一緒に行き、物件を見たり契約に同行したりもしますね。シェルターに入る方々にとって、自力でアパートを探して契約までこぎつけることはすごくハードルが高いんです。役所に行くことや不動産屋と交渉することが苦手な人が多いので」
TENOHASIでは現在、豊島区周辺で約20部屋のシェルターを運営している。昨年4月の段階ではシェルターの数が6部屋だったというから、ニーズは増えていると言えるだろう。
東京都はホームレスを見えないようにしている
一方で、シェルターの入居対象となるホームレス状態の人の数は、政府の統計上では年々減少している。
厚生労働省が2021年1月に実施した「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)」によると、全国で確認されたホームレス数は3824人。2017年1月の5534人から約31%も減少している。同じく東京都で確認されたホームレス数は862人。2017年1月の調査では1397人だったので、こちらも約38%減少という調査結果になっている。
シェルターのニーズが増えているという実態と、ホームレス数が減少しているという国の調査結果には乖離が生まれているが、清野さんは国の調査方法についてこう指摘する。
「国はお昼にしか調査しておらず、夜だけ外で寝ている人は含まれていないので実数ではありません。それにホームレス状態の方の数は、どれだけ寝られるスペースがあるかという問題でもあるんですよね」